打率.429と打撃好調
プロ6年目、阪神の中谷将大の勢いが止まらない。
昨シーズンまでの5年間で一軍出場は17試合、通算で2安打しか打っていなかった男が、6月14日の一軍昇格から約2週間で次々と「プロ初」を記録し、規定打席に到達しているわけではないが、打率は4割を越えている。
一軍登録されてから4試合目の出場となった6月19日ソフトバンク戦、7番一塁の今成亮太にかわって守備から登場すると、1打席目にあと少しでホームランというあたりのセンターオーバー2点タイムリーヒットを放つ。これが「プロ初打点」となった。
リーグ戦再開後の初戦となった6月24日の広島戦は、「7番・左翼」でスタメン出場。左中間への同点タイムリー二塁打を皮切りに「プロ初となる猛打賞」を達成した。
そして今シーズン7試合目の出場となった6月25日広島戦で「プロ初本塁打」が飛び出した。この試合ではチームメートの福留孝介が日米通算2000本安打を打ったこともあり、中谷の本塁打が大きく扱われることはなかったが、4点を追う7回、それまで無失点の好投を続けていた広島の先発・岡田をマウンドから引きずりおろす効果的な2ランだった。
この試合を含め、「プロ初」を記録した3試合はいずれもチームが負けているため、本人としてはすっきりしないだろうが、中谷のここ2週間の活躍には目を見張るものがある。
プロ入り後は長い下積みを経験
福岡工大城東高時代には全国大会出場経験のない中谷だが、恵まれた体格から生まれる長打力にはプロスカウトの注目が集まり、2010年のドラフトで3位という好順位での指名となった。
阪神入団後に捕手から外野手に転向。2年目の2012年8月に一軍初昇格を果たし、8月23日の中日戦でスタメンでのデビューを飾る。一軍で6試合に出場し、高卒選手としては順調に経験を積んでいるように見えた。
その後、大きなケガなどがあったわけではないものの2014年まで一軍への昇格はなく、二軍でもなかなか成績が上がらないまま昨年、勝負の5年目を迎えていた。
そんな昨シーズン、数字だけ見ると、5月にプロ初安打を記録したとはいえ、年間では一軍出場11試合、2安打、打率.182ととても合格点とはいえない成績に終わった。しかし、ファームでは好調を維持し、打率.290、9本塁打、40打点とプロ入り後、二軍では最高の成績を残し、NPBのファーム優秀賞を受賞したのだ。
入団以来期待され続けてきた長打力を追い求めるあまり、おろそかになっていた球の見極めを改善し、選球眼がついてきたことで打席での余裕が感じられるようになったことが好成績に結びついたという。
開幕一軍を狙った今シーズンも、高山俊、横田慎太郎など後輩に先を越されるかたちで出遅れていたが、江越大賀、伊藤隼太を含め付け入るスキがないように思われていた外野のポジション争いもここにきてまた動きを見せており、その行方も再びわからなくなってきた。セ・リーグの広島の独走を止めるためにも、阪神の復活は必要不可欠。そして、阪神の復活には、リーグ最下位のチーム打率をテコ入れする必要がある。
26日の広島戦、最終回の守備で、中堅の中谷が左翼の俊介と激突するハプニングもあったが、「遅れてきた男」中谷の活躍が打線に新たな刺激を与え、それがチームの勝利に結びつくようになれば、ポジション争いもペナント争いも面白くなるに違いない。