どっちが勝っても初優勝!都市対抗・決勝戦
7月15日に幕を開けた、社会人野球の“真夏の祭典”こと都市対抗野球。気がつけば勝ち残ったチームは2つ……。ついに決勝戦を迎えた。
決勝のカードは豊田市・トヨタ自動車vs日立市・日立製作所。ともに初めての優勝をかけて、18時に激突する。
特に日立製作所は、日本選手権も含めた社会人野球の二大大会で初めての決勝進出。創部100年のメモリアルイヤーに華を添えることができるか、大きな注目を集めている。
日立製作所、決勝進出の立役者
日立製作所を初めての決勝戦へと導いた立役者が、準決勝で先発した山本淳。34歳右腕は堂々たる投球で7回を無失点に封じ、大役を全うした。
この山本という投手、実はかつて西武でプレーしていたプロ野球選手だ。東海大相模高校から国際武道大学を経て、社会人・TDK千曲川に入社。主戦投手としてチームを初の都市対抗出場へと導き、2006年の大学・社会人ドラフト3位で西武から声がかかった。
2009年に一軍デビューを果たすも、2013年までで37試合の登板に留まり、プロ通算0勝3敗。一軍での勝利を挙げることができないまま、2013年のオフに戦力外通告を受ける。
そして、西武退団後は社会人野球への復帰を決断。日立製作所へと入社し、この準決勝という大一番で都市対抗初勝利を挙げた。
田中将大と互角に渡り合った男
プロでは未勝利に終わった山本であるが、西武ファンの間で未だに語られている“ある試合”がある。
2012年8月19日、西武ドーム(現・西武プリンスドーム)で行われた西武-楽天の16回戦。この試合で先発した山本は、当時の楽天のエース・田中将大と投げ合った。
すでに球界のエースとしての地位を築き上げていた右腕と、社会人出6年目のプロ未勝利右腕による対決。西武ファンですら試合前からあきらめムードが漂っていた中、山本は一世一代の投球を披露する。
2回に先に点こそ失ったものの、粘り強い投球で5回を3安打、1失点にまとめる力投。4回に味方が1点を挙げて追いついたため、山本は田中に対して負けることなくマウンドを降りた。
すると6回の裏、味方打線が田中を攻略。ヘルマンのタイムリーツーベースを皮切りに、中村、浅村のタイムリーで4点を勝ち越し、田中をKOすると、代わったハウザーから炭谷もタイムリーを放ってこの回一挙5得点。相手エースを沈めた。
山本は5回まででマウンドを降りていたため、プロ初勝利こそつかなかったものの、先発として試合を作り、金星を呼び込んだ山本の投球は称えられた。
そしてその後、この山本の投球にさらなる箔がつく。8月19日の西武戦に敗れた田中は、翌週26日の日本ハム戦から翌年10月8日のオリックス戦にかけて、レギュラーシーズン28連勝をマーク。「1投手によるレギュラーシーズン連続勝利記録」としてギネスにも認定されたこの記録により、山本は「田中にNPB最後の黒星をつけた投手」となったのだ。
“記録”として残るものではないものの、西武ファンの“記憶”にはしっかりと刻まれている。
山本が呼び込んだ勢いのままに、日立製作所は悲願の黒獅子旗に手をかけることができるか。はたまた準決勝でエース・佐竹功年を温存したトヨタ自動車がその勢いをシャットアウトして見せるのか……。
互いに初優勝をかけた決勝戦は、最後まで目が離せない。