苦戦が続く西武...
2008年を最後に優勝から遠ざかっている西武ライオンズ。今季も18日現在で首位・ソフトバンクとは21ゲーム差、3位・ロッテとは11ゲーム離れた5位と、クライマックスシリーズ進出すら厳しい状況に陥っている。
さらに背後には3ゲーム差でオリックスが迫っており、もし最下位で終わることがあれば、実に1979年以来の屈辱となる。
今年もパ・リーグが大きく勝ち越した交流戦では、途中5連敗があったものの9勝9敗でなんとかしのぎ、リーグ戦での巻き返しが期待された。しかし、リーグ戦再開後にチームは低迷。オールスター前までで4勝14敗と一気に借金が膨らんだ形だ。
このままずるずると後退すれば、「最下位転落」も現実味を帯びてくる中、オールスター休み明けの初戦に田辺徳雄監督が先発のマウンドに送り込んだのが、エース・岸孝之だった。そして、岸はロッテ打線を5安打1失点に抑え込み、完投勝利で見事その期待に応える。
内容は申し分ないが...
今年でプロ10年目を迎える31歳右腕。ルーキーイヤーの2008年から昨季まで、2ケタ勝利を逃したのは11年(8勝)と15年(5勝)の2回のみ。毎年のようにケガに泣かされている印象があるが、安定して勝ち星を重ねてきた。
しかし、今季はここまで4勝しか挙げておらず、2年ぶりの2ケタ勝利へ向けては後がない状況。さらに菊池雄星や高橋光成といった若い投手が着実に力をつけており、エースの座も安泰とはいえない。
それでも、ここまで10試合と少ない登板ながら防御率は1.62と秀逸。春先の離脱さえなければ、最多勝、最優秀防御率争いに加わっていてもおかしくない投球を見せている。
いまこそ問われるエースとしての“真価”
西武の苦戦を象徴しているのが台所事情の苦しさ。先発投手陣を見ると、ここまで規定投球回数に達している投手が一人もいないのだ。
こういう時こそ、中堅・ベテランの力が必要になる。投手陣でいえば、やはり岸の奮起なくしてチーム状態が上向くこともないだろう。
岸にとって、今年は3年契約の最終年でもある。チームの信頼を得て、再びエース待遇を勝ち取るには、今季の2ケタ勝利は絶対事項。さらにこのままローテーションを守り、毎試合で7イニング前後を投げ続ければ、規定投球回数に到達する可能性も出てくる。そうなると、最優秀防御率の目も十分あるだろう。
日本シリーズMVPやノーヒットノーランなど、数々の偉業を達成してきたレオのエースは、チームの危機を救うことができるか。今こそ右腕の真価が問われる。
文=八木遊(やぎ・ゆう)