“運命の一日”が終了
10月20日に開催されたプロ野球・ドラフト会議。例年以上の“豊作”ぶりが注目を集めた今年は、最大の目玉であった創価大・田中正義に最多の5球団が入札。抽選の末、ソフトバンクが交渉権を獲得した。
また、1巡目の再入札、いわゆる“ハズレ1位”の入札で残った5球団すべてが桜美林大・佐々木千隼を指名するという珍事も。結果、佐々木の交渉権はロッテが獲得している。
今年も盛り上がったドラフト会議であるが、このあとどのような流れで、どのような手順で正式に契約となるのかという部分をご存知の方はそう多くないだろう。
というわけで、今回は「ドラフト指名選手がいかにしてプロ野球選手になっていくのか」という部分に注目。今回もかつてのドラフト1位右腕・増渕竜義氏に話を伺った。
『ドラフト後の流れって?』
指名を受けると、まずは近日中に球団スカウトの方や関係者の方が学校を訪れ、指名の挨拶に来られます。球団側から「今回指名をさせていただいた~」などの説明があり、世間話を挟んで、選手の意向などを聞くようなものでした。
よくある監督からのメッセージをいただいたり、引き当てた時の「交渉権獲得」の紙などがもらえるのも、この時かと思います。
指名された本人はというと、早速練習を始めなければなりません。個人の意識の問題もあるとは思いますが、僕の場合はすぐに体を動かし始めました。指名後のおおまかな流れは以下のようになります。
【ドラフト指名後の流れ】
1.指名挨拶
2.仮契約
3.本契約(入団発表)
4.入寮
5.新人合同自主トレ
6.春季キャンプ
予定は契約時にある程度明らかになるのですが、まずは5番の「新人合同自主トレ」に向けて練習することになります。新人同士が初めて一緒に練習する場ですから、とにかくここで恥をかかないように、万全の体調で臨むことができるように体を作っておくことが大事です。
新人にとってのスタートライン。この時から勝負は始まるのです。指名されて安心するのも分かりますが、指名を受けたらまず、この自主トレを目標にして練習を開始するべきだと思います。
『プロの世界ってすごい...』
また、新人が注目を浴びるイベントのひとつに「入寮」があります。
それまでに一人暮らしを経験している選手にとっては何ら問題はないのでしょうが、親元で暮らしてきた選手にとっては初めての“一人立ち”となります。
これはヤクルトの場合ですが、合同自主トレ前には入寮してくださいという説明がありました。なので、自主トレの前には新人同士である程度の面識はありましたね。
この「入寮」でおそらく選手たちは驚くと思います。施設がもの凄く充実していて、「こんな所に住めるの?」なんて驚いたことを覚えています。
何と言ってもプロ野球ですから、野球に集中できる環境ができています。いろいろな設備が整っていますし、高校卒業したての僕にとってはまさに「夢のような家」でした。
そしてさらに驚いたのが、寮の食事です。これが美味しいのなんのって。大げさでもなんでもなく、本当に「衝撃」でした。栄養士・調理師の方々が作ってくれるのですが、あの味は一生忘れませんね。
こうしてドラフトから徐々にプロの世界へと入っていく感じですが、その道中は驚きの連続です。「プロの世界ってすごい...」って
ことばかりでした。
▼ 増渕竜義・プロフィール
株式会社King Effect代表取締役。1988年5月3日生まれ、28歳。
同期に田中将大(ヤンキース)や前田健太(ドジャース)がいる“88世代”。
埼玉の公立校・鷲宮高校で1年生からエースとして活躍。
3年時には最速147キロをマークしたが、甲子園出場経験はなし。
2006年の高校生ドラフトで西武とヤクルトから1位指名を受け、抽選の結果ヤクルトに入団。
2013年までの7年間で先発・中継ぎに活躍し、通算157試合に登板した。
2014年にはトレードで日本ハムへと移籍。2015年に現役を引退。