今井達也は西武へ
10月20日に開催されたプロ野球・ドラフト会議。有望な投手が揃う“当たり年”と言われた今年は、1巡目で創価大・田中正義を巡って5球団が競合。さらに“ハズレ1位”でも桜美林大・佐々木千隼に5球団が競合するなど、大きな盛り上がりを見せた。
“BIG3”や“BIG4”などと呼ばれた高校生も、1巡目で4名が消えた。夏の甲子園優勝投手である作新学院の今井達也は、西武が単独指名に成功。すんなりと交渉権を獲得した。
「甲子園優勝投手」という看板は、アマチュア球界において何よりも大きな看板であると言っても過言ではない。プロ志望届を出せば、その瞬間から“秋の主役”として注目を浴びることになる。
今回はその「甲子園優勝投手」に着目。直近20年の優勝投手とその後を調べてみた。
高卒でのプロ入りは9名
高校球界の頂点に立ったエースでも、そのままプロ野球に乗り込んでくるかというと実はそうでもない。
この20年、高卒でプロ入りを果たしたのは松坂大輔(1998年)、正田樹(99年)、近藤一樹(01年)、田中将大(06年※)、堂林翔太(09年)、藤浪晋太郎(12年)、高橋光成(14年※)、小笠原慎之介(15年)、そして今年の今井達也と合わせて9名。半数にも満たないのだ。
なお、このうち田中将大と高橋光成に関しては、全国制覇を果たしたのが2年の時。純粋に3年夏を制してのプロ入りとなると、その数はさらに減ることになる。
ただし、直近5年に限れば、藤浪晋太郎のあと1年空けて高橋光成、小笠原慎之介、今井達也と4名がプロ入りを表明中。“慎重思考”からの脱却も進みつつある。
大学経由は茨の道...?
また、大学を経由してプロの門を叩いた投手はこの20年間で2名。かなり少ない傾向にある。そして、この2名に共通しているのがプロで苦戦を強いられているという点だ。
2006年に早稲田実業を頂点へと導いた斎藤佑樹は、早稲田大を経て2010年のドラフト1位で日本ハムに入団した。
甲子園史にその名を刻むような大活躍で一躍ヒーローとなった男は、大学でも様々な栄冠を掴み、満を持してプロの世界へ。ところが、プロ入り後の6年間で挙げた勝利はわずかに14。高卒でプロ入りした同級生たちと大きく水を開けられる結果となってしまっている。
2010年に沖縄に真紅の大優勝旗をもたらした興南・島袋洋奨も、大学を経てからのプロ入り。しかし、その順位は5位だった。
中央大へと進んだ左腕であったが、大学では思うような活躍ができずに大スランプに陥ってしまう。最終的には指名にかかるかどうかも危ういところまで追い詰められたが、ソフトバンクから5位指名を受けてプロの世界へと飛び込んだ。
どん底を脱出し、巨大戦力の中で1年目から一軍登板を果たしたものの、2年目の今シーズンは一軍登板ゼロ。苦しい戦いが続く。
期待が高ければ高いほど、その分落胆も大きい。「甲子園優勝投手」という看板は大きな武器になるが、同時にとてつもない重荷となる危険性もはらんでいるのだ。
今井達也は重圧をはね退け、自らの実力を発揮することができるか...。「“甲子園優勝投手”のその後」に注目だ。
最近20年の甲子園優勝投手
<1997年・第79回>
優勝:智弁和歌山
・藤谷俊之 ⇒ 進学(龍谷大)⇒ 社会人(一光)
・清水昭秀 ⇒ 進学(法政大)⇒ 社会人(日本通運)
<1998年・第80回>
優勝:横浜
・松坂大輔 ⇒ 西武(98年・1位)
<1999年・第81回>
優勝:桐生第一
・正田樹 ⇒ 日本ハム(99年・1位)
<2000年・第82回>
優勝:智弁和歌山
・中家聖人 ⇒ 進学(立命館大)
<2001年・第83回>
優勝:日大三
・近藤一樹 ⇒ 近鉄(01年・7位)
<2002年・第84回>
優勝:明徳義塾
・田辺祐介 ⇒ 進学(関西大)⇒ 社会人(トヨタ自動車)
<2003年・第85回>
優勝:常総学院
・磯部洋輝 ⇒ 進学(中央大)⇒ 社会人(室蘭シャークス)
<2004年・第86回>
優勝:駒大苫小牧
・岩田聖司 ⇒ 進学(駒沢大) ※中退 ⇒ 社会人クラブ(北海道マーリンズ)
<2005年・第87回>
優勝:駒大苫小牧
・田中将大 ※当時2年 ⇒ 楽天(06年・1位)
<2006年・第88回>
優勝:早稲田実
・斎藤佑樹 ⇒ 進学(早稲田大)⇒ 日本ハム(10年・1位)
<2007年・第89回>
優勝:佐賀北
・馬場将史 ⇒ 進学(中央大・準硬式)
・久保貴大 ⇒ 進学(筑波大)
<2008年・第90回>
優勝:大阪桐蔭
・福島由登 ⇒ 進学(青山学院大)⇒ 社会人(Honda)
<2009年・第91回>
優勝:中京大中京
・堂林翔太 ⇒ 広島(09年・2位)
・森本隼平 ⇒ 進学(法政大)
<2010年・第92回>
優勝:興南
・島袋洋奨 ⇒ 進学(中央大)⇒ ソフトバンク(14年・5位)
<2011年・第93回>
優勝:日大三
・吉永健太朗 ⇒ 進学(早稲田大)
<2012年・第94回>
優勝:大阪桐蔭
・藤浪晋太郎 ⇒ 阪神(12年・1位)
<2013年・第95回>
優勝:前橋育英
・高橋光成 ※当時2年 ⇒ 西武(14年・1位)
<2014年・第96回>
優勝:大阪桐蔭
・福島孝輔 ⇒ 進学(同志社大)
<2015年・第97回>
優勝:東海大相模
・小笠原慎之介 ⇒ 中日(15年・1位)
<2016年・第98回>
優勝:作新学院
・今井達也 ⇒ 西武(16年・1位)