あまり取り上げられない秋
シーズンも終わり、来季へ向けた準備がはじまったプロ野球界。現在の選手たちが何をしているのかというと、多くは各地で『秋季キャンプ』に臨んでいる。
春のキャンプと比べるとさほど取り上げられることも少ない秋であるが、たびたび“地獄”といった表現が飛び出すように、実はこの秋のキャンプこそ厳しく、つらく、険しいものなのだと言う。
今回はあまり取り上げられない『秋季キャンプ』について、元プロ野球選手の増渕竜義氏に話を伺った。
「最も嫌な時期」
この秋というのは、プロ野球選手にとって“最も嫌な時期”と言っても過言ではないでしょう。
日本シリーズが終わった、ちょうどこの頃。チームは来季に向けて約2~3週間ほどの秋季キャンプに入ります。春季キャンプほど目立たず、春に比べると報道もほとんどされませんが、選手にとってはまさに“地獄”の期間になります。
春と何が違うのかと言うと、まず練習量が倍くらい違います。大げさに言うと、ケガをしないギリギリのこところまで追い込む練習をするのです。
直後にオープン戦やシーズンが待っているわけではないので、ここでは“調整”なんて関係ありません。とにかく極限まで自らをいじめ抜き、朝から晩まで野球漬けの毎日となります。
野球漬けの日々
1日のメニューは大体こんな感じです。
・朝9時 練習開始
アップ
サーキットトレーニング
ランニング
キャッチボール
ノック
以上が全体練習のメニューで、以降はポジションごとの練習になります。
投手ならばピッチングやバント練習、ノック、トレーニング、走り込み。野手はノック、打撃練習、走塁練習、走り込み、トレーニング。
一見すると「普通のキャンプじゃん...」なんて思うかもしれませんが、量も追い込み方も半端じゃありません。夕方17時頃まで練習するのですが、毎日ヘトヘトになって宿舎に戻ります。
さらにその後、夕食を取ったら今度は夜間練習です。投手はシャドーピッチングにトレーニング。野手は素振りに、室内での打撃練習が待っています。
戦いはすでにはじまっている
そして練習が終わると、今度は全体ミーティングや担当コーチとの個別ミーティングが行われます。個別ミーティングとは、今後の課題や目標を担当コーチと意見交換する場になります。
これが終わるとやっと就寝...というわけでもありません。夜間練習の後は、夜食をとります。夜食後に入浴。そのあとにボディケアを行い、ようやく布団に入ることになります。
もう布団に入った瞬間に爆睡。もはや気が付くと朝になっている感じです。起床すると選手全員で体操。朝食をとって球場へと向かいます。
ざっと紹介しましたが、このような生活が2~3週間も続くのですから、まさに“地獄”です。
秋季キャンプが終わると、その後はオフの期間となりますが、キャンプで作った体を春まで維持したいと思うとなかなか休めません。今ではオフをとらずに自主トレを続けるという選手もいますね。
このように、シーズンが終わったからと言って休めるわけではありません。すでに来シーズンへ向けた戦いははじまっているのです。
▼ 増渕竜義・プロフィール
株式会社King Effect代表取締役。1988年5月3日生まれ、28歳。
同期に田中将大(ヤンキース)や前田健太(ドジャース)がいる“88世代”。
埼玉の公立校・鷲宮高校で1年生からエースとして活躍。
3年時には最速147キロをマークしたが、甲子園出場経験はなし。
2006年の高校生ドラフトで西武とヤクルトから1位指名を受け、抽選の結果ヤクルトに入団。
2013年までの7年間で先発・中継ぎに活躍し、通算157試合に登板した。
2014年にはトレードで日本ハムへと移籍。2015年に現役を引退。