議論を呼ぶ『入団拒否』騒動
ドラフト会議からもうすぐ1週間が経過。各球団の指名挨拶もはじまり、入団へ向けて徐々に動きが慌ただしくなってくる。
そんな中、“ある問題”に直面しているチームがある。パ・リーグ覇者として日本シリーズを戦っている日本ハムだ。
ドラフト6位で指名した履正社高の山口裕次郎だが、なんでも入団を拒否する構えを見せているという。
経緯を簡潔にまとめると、山口はドラフト前から「4位以下ならば社会人」という方針を各球団へ通達していたのだという。その上でプロ志望届を提出した、いわば“条件付”でのプロ志望であった。
日本ハムはそれを承知の上で、山口を6位で指名。そして現在に至るというわけだ。
育成を除いたドラフト指名選手の“入団拒否”となると、2011年の菅野智之(日本ハム・1位)以来で5年ぶり。その動向に注目が集まっており、様々な議論を呼んでいる。
今回はかつてのドラフト1位右腕・増渕竜義氏に『入団拒否』について見解を伺った。
基本的には本人の自由も、「個人としては...」
指名後の『入団拒否』って、たまに起こりますよね。これに関しては人それぞれの考えがありますし、一概には言えませんが、基本的に本人の自由なのかなと思っています。
しかし、私個人的な意見を言わせていただくと、指名されたくてもされない選手がたくさんいる中で、「どうなのかな?」っていう思いもあります。
今回のケースは、「4位以下なら拒否」という形を前もって決めていたとのこと。私の勝手な推測では、「評価を見て、もっとレベルを上げてからプロに挑戦する」など、本人や周囲の様々な考えがあるのでしょう。
しかし、「ドラフト上位でなければ入団しない」という考えは...私としてはあまり良く思えません。
「グラウンドでは順位は関係なし」
確かに、ドラフト1位で入団するのと下位で入団するのでは、やはり世間からの注目度も違ってきます。契約金なども含め、差が出るのは事実でしょう。
しかし、入団してしまえば、そこからは1位も下位も関係ありません。春季キャンプでは、メディアによるインタビューや取材の数などの差はあったとしても、練習においては特別扱いなど一切なし。練習メニューや待遇も全部一緒です。
グラウンドに入れば、上位も下位も同条件。まさに実力の世界になるのです。
あくまで「自由」
まとめると、ドラフトの順位などは入団してしまえば関係ないということ。
どういう思いで「4位以下なら拒否」ということになったのかは本人たちにしか分かりませんし、こちらから何か言われる筋合いもないでしょう。それぞれの考えがあっての選択ですし、本人たちの自由です。ましてやその決断に正解・不正解や、善悪などもありません。
ただし、個人的には、プロ志望があって声もかかっているのに断ってしまうのはもったいないなという気持ちですね。
指名に至るまでにたくさんの人が動いてくれていますし、スカウトの方たちも何度も足を運んでいるかと思います。そういう方々の思いであったり、入団してからの可能性などを考えると、少し残念な気がしてしまうというのが本音です。
▼ 増渕竜義・プロフィール
株式会社King Effect代表取締役。1988年5月3日生まれ、28歳。
同期に田中将大(ヤンキース)や前田健太(ドジャース)がいる“88世代”。
埼玉の公立校・鷲宮高校で1年生からエースとして活躍。
3年時には最速147キロをマークしたが、甲子園出場経験はなし。
2006年の高校生ドラフトで西武とヤクルトから1位指名を受け、抽選の結果ヤクルトに入団。
2013年までの7年間で先発・中継ぎに活躍し、通算157試合に登板した。
2014年にはトレードで日本ハムへと移籍。2015年に現役を引退。