給料が公に明かされる職業
11月に入り、いよいよ本格的なオフシーズンが訪れるプロ野球。各チームで秋季キャンプがはじまり、いよいよ交渉解禁が近づくFA選手にも注目が集まる中、その裏でひっそりと始まっているのが「契約更改」だ。
来年の給料を決める面談が、野球選手の場合は「契約更改」としてもはやイベント化されており、終わると報道陣に給料のことについて聞かれる。そして翌日の新聞には「※推定」として給料の金額が予想され、公にされる。
よくよく考えればとんでもないことであるが、当の選手たち本人はどう思っているのか。今回も元プロ野球選手・増渕竜義氏に聞きづらいことを聞いてみた。
待ち遠しいか、迎えたくないかは成績次第!
「契約更改」とは、簡単に言うと来季の年棒を球団に決めてもらい、選手が了承して判を押すということ。
この契約を結ぶと、選手は来季もそのチームの所属となり、さっそく自主トレを開始することとなります。毎年の雇用が約束されていないという点では、一般の企業などでは考えられない雇用体系ですよね。
選手たちは生活がかかっているわけですから、正直この時期はドキドキしながら生活しています。その年に活躍できていたら「年棒アップかな」ってワクワクもしますし、逆にまったく活躍できなかったら、まさに食事がのどを通らないような日々を過ごすことになります。
秋季キャンプ終了後、球団関係者の方から連絡が来て契約更改の日時を伝えられますが、その日が待ち遠しいのか、迎えたくないのかは人それぞれですよね。
当日の流れ
迎えた契約更改当日。ほとんどが球団事務所の会議室で行われると思います。そこには球団幹部やGM、査定担当者といったそうそうたる面々が揃い、少し緊迫したムードが漂っています。
まずはそのシーズンの成績を互いに確認。それから査定担当者の登場です。
査定担当とは、毎試合選手の成績やチームへの貢献度をチェックして、記録している人。すごく細かなデータまで用意されています。
基準となる評価は、投手では登板数や勝敗、防御率など。打者は出場試合数や打率、本塁打数、盗塁数、打点数などです。
評価には様々な内容があって、必ずしも個人の記録だけで評価されるのではなく、“チームへどれだけ貢献できたか”という部分も大きなポイントとなります。
「保留」って何?
たまに、この契約更改で「保留」をする選手がいると思います。選手にとっては一年一年が勝負になるので、この時期はすごく年俸に対して敏感になっているのです。
選手は「自分はこれだけ今年活躍したんだから、このくらいの年俸になるだろう」という期待感をもって更改に臨んだりもします。ここで実際に予想していた金額と大幅なズレがあったりすると、「保留」となるわけです。
一方で球団側には球団側なりのいろいろな要素があるようで、たとえば「個人で活躍しても、チームが最下位だった」とか...。これ以上は言えませんが、とにかく選手は提示された内容に納得がいかなければ判を押さなければ良いのです。
「保留」と言うとあまり良い印象を持たない人も多いと思いますが、改めて球団にもっと評価をしてほしいというアピールの形。改めて違う日に契約更改を行い、双方納得がいく形で終われば何も問題はありません。
とは言ったものの、保留選手が出れば、当然チーム内でも話題になります。
また、新聞等にも大きく報じられてしまうので、球団としてもあまり良い状況とは言えないでしょう。
選手としては、ある程度の金額を予想して席に着くことが多いので、「予想以上の額ですぐに判を押す」という形が理想です。実際、10分ほどで終わる選手もいますから。
▼ 増渕竜義・プロフィール
株式会社King Effect代表取締役。1988年5月3日生まれ、28歳。
同期に田中将大(ヤンキース)や前田健太(ドジャース)がいる“88世代”。
埼玉の公立校・鷲宮高校で1年生からエースとして活躍。
3年時には最速147キロをマークしたが、甲子園出場経験はなし。
2006年の高校生ドラフトで西武とヤクルトから1位指名を受け、抽選の結果ヤクルトに入団。
2013年までの7年間で先発・中継ぎに活躍し、通算157試合に登板した。
2014年にはトレードで日本ハムへと移籍。2015年に現役を引退。