「セ・パのちがい」とは…
2016年もいよいよ残りわずか。ストーブリーグも一段落し、早くも新たなシーズンへの準備をはじめる選手も出てきた。
このオフは驚きのトレードで幕が開け、FAでは5名が移籍。人的補償による移籍も一件成立している。そんな移籍のなかでたまに話題に挙がるのが、「セとパのちがい」である。
かつては“人気のセ、実力のパ”などという言葉もよく聞かれたものであるが、実際のところはどうなのか。また、戦い方や野球そのもののちがいというのはどれほど感じられるものなのだろうか...。
ということで、今回はヤクルトと日本ハムでプレーした増渕竜義氏に「セ・パのちがい」について聞いてみた。
「リーグの“差”はない」
“人気のセ、実力のパ”という声はよく聞きます。しかし、実際にやっている選手にしてみれば、そんなことはないと思っています。
また、パの方が力で押す投手が多いというイメージを持っている方が多いようですが、セにもたくさんいます。打者も両リーグ甲乙つけがたい選手たちがそれぞれにいますので、セとパに“差”はないと感じました。
セとパの“ちがい”を挙げるとしたら、やはり指名打者制度がある/ないの部分ですね。私はヤクルトと日本ハムでプレーをしましたが、移籍した時に最も戸惑ったのがDH制でした。
ヤクルトの時は打席がありましたので、なかなか投球に専念とはいきませんでした。打撃はもちろん、犠打や走塁もあるので、プレーする側はバタバタ。練習でもフリー打撃に時間を割きますし、バント練習となると結構な量をこなします。
投手的な視点で見ると、相手投手との対戦があるのでアウトを取りやすいという利点もあります。ただし、圧倒的有利と見られる投手との対戦となると、結構投げにくい部分があるのです。
たまに投手を相手に四球を与えてしまう投手がいますよね。見ていて「何してるんだ」と思うファンの方も多いと思いますが、同じ投手としてはすごく気持ちが分かります。
“普通に投げれば”、なかなか打たれることはないと分かっているんですが、その投手心理は複雑。相手もバットを持って打席に立っているからには何が起こるかは分かりませんし、そこで「もし打たれたら...」と思って力が入ってしまうこともあります。
加えて、相手が投手という事もあり、「死球を当ててしまったら大変なことになる...」などなど、色々と考えてしまうんですね。なので、私は相手投手との対戦というのが実は大の苦手でした(笑)
最終的には「好み」の問題!?
一方のパ・リーグはDH制があるので、打席に立たなくていい分ピッチングに専念することができます。このちがいは本当に大きいですね。
もちろん交流戦では打席に立つことになりますが、それ以外はとにかく投手に専念。こういったこともあり、投手の“起用法”という部分でも大きく作戦が変わってきます。
たとえばセでは、試合の展開に応じて投手に代打を送るというシーンが必ず訪れます。投手と打線の調子、内容を見ながら、どこで仕掛けるべきなのかを見極めていく必要があるのです。
それに対してパの方はいつ代打を出されるかという不安はないものの、投手と対戦しないというリスクもあります。指名打者という文字の通り、打撃に定評がある選手が投手の代わりとして打席に入るわけですから、投げる方としては気を抜ける瞬間はありません。
自分も打席に立たなければいけない反面、投手との対戦があるセ・リーグか。投球に専念することができる反面、投手との対戦がない分気抜けないパ・リーグか...。どっちが有利・不利ではなく、人それぞれの好みの問題かなと思います。