12球団最多得点も最多失点...投手の底上げは必須課題
昨季、12球団最多の667得点と圧倒的な攻撃力を見せたヤクルト。一方で、717失点も12球団最多と投手陣に悩まされた。2年連続の最下位に終わった原因は明らかだが、このオフにFAでロッテから成瀬善久、シンシナティ・レッズから2メートル右腕のオンドルセクを獲得するなど積極的に補強し、投手陣の整備は着々と進んでいる。
成瀬やオンドルセクが期待通りのピッチングを見せることも今季のヤクルトを占う上で重要なカギとなるが、昨季までの戦力で大いに注目したいのが杉浦稔大、その人である。
2013年のドラフト1位で國學院大学から入団した杉浦は、背番号18を与えられるなど即戦力の期待が大きかったものの、昨年の春季キャンプ中に右ヒジを痛め離脱。手術をうけずリハビリに励み、実戦復帰したのは7月21日のイースタンリーグでの試合だった。
イースタンリーグで5試合に登板し2勝1セーブ、防御率0.72と結果を残した杉浦は、9月10日のDeNA戦でプロ初登板を初先発で果たした。6イニングで9奪三振2失点と好投・打線の援護に恵まれず敗戦投手となったが、その後、同24日の広島戦で3本塁打を浴びながらも念願のプロ初勝利をあげ、シーズン通算では4試合に登板し2勝2敗、防御率3.52でプロ1年目を終えた。
与四球率は驚異の0.78、奪三振率も10個以上!
杉浦の魅力は常時145キロ前後を記録するストレートと、変化球もスライダー、カーブ、スプリットを投げ分けるうえに、どの球種も自在にコントロールできる点だ。
昨季、杉浦は一軍で23イニングを投げ、与えた四球はたったの2つ。9イニングあたりの与四球率は0.78と驚異的な数値であった。昨季、セ・リーグの規定投球回に達した投手のなかで与四球率が最も少ないのが前田健太(広島)だが、それでも1.97ということからも杉浦の制球力がいかに優れているかがわかる。
國学院大学時代、杉浦は4年間で144イニングあまりを投げ、与えた四死球は22。9イニングあたり約1.3だったが、その力をプロでも発揮している。
与四球が少ないだけではなく、奪三振が多いのも杉浦の特長だ。昨季、杉浦が奪った三振は28。9イニングあたりの奪三振率は10.96になる。最多奪三振のタイトルを獲得したメッセンジャー(阪神)でも奪三振率は9.76だ。言うまでもなく、三振は最も安全にアウトを取る手段で、四球は野手の守備力とは関係なく出塁を許してしまうことである。その点、杉浦は最も安全にアウトを取る手段に長け、もったいない出塁を許す機会が少ない投手なのである。
たしかに、杉浦が投げたイニングは少ないが、その中でもドラフト1位の力を見せたと言っていいだろう。課題をあげるなら、昨季、登板した4試合中3試合で失点した初回の入り方ぐらいである。
補強した選手に加え、館山昌平や由規といったケガ人も復帰すれば心強いが、杉浦がシーズンを通してどれだけのピッチングを見せるか。ヤクルトが巻き返すカギは杉浦が握っているのかもしれない。
文=京都純典(みやこ・すみのり)