中島裕之のモヒカン、小谷野栄一のヒゲとパーマ、自由すぎる新キャプテン糸井嘉男。
そんなナインを見た森脇監督は「独創性があっていいね。好きにやってくれという感じ」と大人のコメント。張り切ったブランコは4.5キロのハンマーをバット代わりに規格外のティー打撃を披露。2015年のオリックス・バファローズ始動。なんだけど、宮崎キャンプのチーム宿舎近くでは宿敵ソフトバンクが優勝パレードを実施。ちきしょう次は俺らの番やで。そらそうよ。頂点まであと一歩が届かなかった昨年の雪辱を誓い、オフには総額30億円以上の大型補強ぶっこみ。球団事務所を神戸から大阪に移転して9年目の今シーズン、09年は128万人だった観客動員数も14年には170万人超え。いざ、96年以来となるリーグVへ。
帰ってきた猛牛軍団。そんな言葉がよく似合う男たちが顔を揃えた今のオリックスに漂うのは、懐かしの「古き良きパ・リーグ感」だ。無茶苦茶でユルユルで隙だらけだけど時に繊細さもチラ見せ。もうたまんねぇ自由奔放さ。ブランコは現代のブーマー(元阪急)で、T-岡田は門田博光(元南海)の再来だ。投げる芸術家・金子千尋からは、山田久志(元阪急)や鈴木啓示(元近鉄)のような昭和の大エースの緊張感が漂う。イケメンボスの森脇浩司は近鉄バファローズでプロのキャリアをスタートさせた叩き上げである。
04年、その近鉄とオリックスの合併で永久欠番が消え、野茂英雄は「日本の球団は積み重ねてきた歴史を簡単に捨てる」と苦言を呈した。あれから10年、オリックスは未来へ進むと同時に、忘れたはずの過去を取り戻しつつある。公式ファンクラブ「BsCLUB」は、会員の行動データ分析に加え、電話営業・ダイレクトメールといったアナログ手法も駆使し会員数は飛躍的に増加。球場では地道な来場者プレゼント企画、ダンス&ヴォーカルユニットBsGirlsが試合を盛り上げ、時に阪急や近鉄の復刻ユニフォーム着用する。あの頃と今が同居したミックスモダン営業戦略。古き良き、そして新しいパ・リーグへ。
今季のオリックスのチームスローガンは「輝氣2015 輝こう、一緒に」。近年は「一緒に」や「ひとつになろう」というニュアンスのスローガンが続く。目指したのは選手たちとファンとの一体感だけではない。2015年、ついに「オリックス」と「バファローズ」がひとつになろうとしている。お帰り、いてまえ打線。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)