ルーキーから2年連続で開幕投手 25年ぶりのシーズン7完封
球界を代表するエース田中将大がメジャーへ移籍した2014年。田中の後を継ぐエースとして期待された則本昂大は、西武との開幕戦でいきなりプロ初完投勝利をあげた。ルーキーイヤーから2年連続で開幕投手を務めたのは、実に54年ぶり3人目のことだった。
4月18日の日本ハム戦ではプロ初完封勝利をあげ、5月9日ロッテ戦から6月3日の阪神戦まで、28回2/3イニングを無失点に抑えた。交流戦新記録の1シーズン4完封を記録するなど、シーズンを通しても球団新記録の7完封。12球団を見渡しても7完封は1989年の斎藤雅樹(巨人)以来の記録だ。
終わってみればパ・リーグ最多の202回2/3を投げ14勝10敗、防御率3.02、204個の三振を奪い、自身初のタイトルとなる最多奪三振を獲得。オフの日米野球では第3戦に先発し5回をノーヒットに抑える快投を見せ、日米野球史上初の継投でのノーヒットノーランに貢献した。
ルーキーイヤーと比べ、則本が進化した点は主に2つある。
まず、与四球率が13年の2.70から昨季は1.73に減ったこと。規定投球回に達した投手のなかで両リーグ最少の数値だ。
次に、ゴロアウトを打たせる割合が大幅に増えた。13年はGO/AO(※)が0.74だったが、昨季は0.98まで上昇。まだ若干フライアウトの割合が多いが、ゴロを打たせる術を覚え始めたのだ。四球で余計な走者を許さず、長打の危険性が少ないゴロを打たせること。投手として理想的なピッチングを見せつつあると言っていい。
7完封を記録しながら防御率は3点台 ムラを少なくするのが今後の課題!
ただ、球界のエースとなるために、まだ課題は多い。
昨季、7完封をマークしながら防御率が3.02と決して優秀な数値を残せなかった要因は、ムラの多さにある。
4月25日のオリックス戦で5回9失点も喫したのをはじめに、28度の先発で4失点以上の試合が9度もあった。月別成績を見ても、6月に防御率1.29を記録したかと思えば翌7月は9.87と一気に調子を落としている。
1試合のなかで見ても、1イニングあたりに3失点以上したのが計9回。金子千尋(オリックス)が2回、岸孝之(西武)が4回、大谷翔平(日本ハム)が5回ということから見ても、則本が試合の中で突然崩れる回数がいかに多いかわかるだろう。
被安打のなかに占める長打の割合も29.9%と、パ・リーグの規定投球回に達した投手のなかで岸に次いで高い。ゴロアウトの割合が増えたにも関わらず長打が多いということは、高めに抜ける球が多いと推測することができる。
田中の後釜という重圧もありながら、2年続けて結果を残した則本。さらなる進化のためには、登板した1試合を通して安定したピッチングを見せることが重要だ。
チームは、松井裕樹に続き、昨秋のドラフトで安楽智大も獲得した。近い将来、楽天が投手王国を築くためには、則本の一層の奮起が求められる。
(※)ゴロアウト/フライアウト比率(GO/AO )
セイバーメトリクスの指標のひとつで、ゴロアウト(GO)の総数をフライアウト(AO)の総数で割り、ゴロアウトとフライアウトの比率を調べる指標。同じ数の場合は1となり、これより数値が大きくなるほどゴロアウトの割合が高く、数値が小さくなって0に近付くほどフライアウトの割合が高い投手となる。今季のセ・リーグ平均は1.16。パ・リーグ平均は1.11。
文=京都純典(みやこ・すみのり)