リリーフ陣の再構築が西武の重要課題
「優勝するチームには必ず強力なリリーフ投手がいる」。近代プロ野球において、よく聞かれる言葉である。
代表的なリリーフ陣と言えば、2005年にセ・リーグ優勝を果たした阪神のジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之による、いわゆる「JFK」。昨季のパ・リーグで最後まで熾烈な優勝争いを見せたソフトバンクとオリックスも、それぞれ強力なリリーフ陣を擁していた。そのリリーフ陣の防御率は、ソフトバンクが2.38でリーグトップ、オリックスは2.49でリーグ2位であるから、その大事さが数字にも顕著に表れていると言っていい。
そんな中、近年リリーフ陣に悩まされているのが西武だ。リリーフ陣の防御率が2012年は3.60、2013年も3.91でリーグワースト。リリーフ陣の要であるクローザーでも苦労し、チーム最多セーブは2013年がサファテの10、2012年は涌井秀章が30セーブを挙げたが、本来は先発の涌井を転向せざるを得ないほど、クローザーの人材が不足していたのである。
強力な打線を擁しながらも、勝ちパターンのリリーフ陣を作れないために、安定して戦えないのが西武の抱える大きな課題だった。
高橋の奪三振率は、堂々の11.49!
ところが、昨季の西武はリリーフ陣の防御率が3.46とリーグ4位と持ち直した。
その中心となったのが、44試合に登板し22ホールドを挙げたセットアッパーの増田達至と、63試合に登板し29セーブを挙げたクローザーの高橋朋己である。
とくに目を引いたのが高橋だ。173センチと身長が低い上に、全投球の8割近くを占めるストレートの球速も145キロ前後と特筆すべきものはない。しかし、打者にとって球の出所が見にくいうえ、右打者の内角に食い込むストレートは球速以上に速さを感じる。
細かく数字を見ていくと、昨季は62回2/3を投げ80個の三振を奪い、奪三振率は11.49だ。昨季、12球団の各チーム最多セーブを記録した投手では、サファテ(ソフトバンク)の12.64、バーネット(ヤクルト)の11.69に次ぐ高さである。被打率は右打者を.185と抑えているのに対し、左打者に.247と比較的打たれたが、トータルで見れば.206でそれほど心配はない。西野勇士(ロッテ)の.169、呉昇桓(阪神)の.172に次ぐ低さだ。被本塁打も昨季は2本と少なく、クローザーとして申し分ない。
あえて欠点をあげるならば、与四球率が3.45と多いところか。だが、四球を連発するタイプではなく、制球面から崩れる投手ではないことも強みだろう。
気づけばリーグ優勝から7年も遠ざかっている西武。80年代から90年代にかけての黄金時代を知るファンも減ってきた。勝ちパターンで中継ぎ陣が試合をしっかりと作り、絶対的な力を見せるクローザーの高橋にどれだけつなげられるか。前述の増田の他に、ベテラン右腕の岡本篤志や、昨年47試合に登板した左腕の武隈祥太の奮起に期待がかかる。
昨季のホームラン王を分け合った中村剛也とメヒアを中心とした打線が強力だからこそ、今年こそは確立したい重要なポイントなのである。
文=京都純典(みやこ・すみのり)