驚異のゴロアウト率76.3%を誇る黒田のスゴさ
今季、MLBから広島に復帰した黒田博樹が、さすがのピッチングを見せている。
オープン戦初登板となった8日のヤクルト戦で打者13人をパーフェクトに抑えると、15日のオリックス戦では6回を5安打2失点。開幕前最後の登板となった22日のソフトバンク戦でも7回6安打無失点に抑えた。
その中で、俄然目立つのがツーシームでバットの芯を外してゴロを打たせる投球術だろう。8日のヤクルト戦ではゴロアウトとフライアウトが5つずつ。15日は、ゴロアウトが11に対しフライアウトは2つ。22日はゴロアウトが13でフライアウトが2つだった。
オープン戦通算で見てもゴロアウトが29に対し、フライアウトが9つで、ゴロアウトの割合は驚異の76.3%。昨季、両リーグで規定投球回に達した投手のゴロアウトの平均は55.0%、フライアウトの平均は45.0%だ。ゴロアウトの割合がもっとも高かったディクソン(オリックス)の69.7%をも軽々と黒田は上回っているということになる。
ピッチャーがアウトを取る手段は大きく分けて、三振、ゴロアウト、フライアウトの3つある。その中で、もっとも安全な手段が三振なのは言うまでもないが、次に安全なのがゴロアウトである。
フライアウトは、野手の送球エラーというリスクはないが、長打の可能性がグッと高くなる。ゴロの打球で長打になる当たりは一塁線、三塁線の打球にほぼ限られるが、フライの打球は外野手の上を超えれば高い確率で長打になる。何よりゴロの打球が本塁打になることは、ランニング本塁打以外にない。
ゴロを多く打たせれば勝つ確率が高くなる?
昨季、規定投球回に達した投手の中でゴロアウトの割合がもっとも高かったディクソンの被本塁打は7本。これは、12球団で2番目に少ない数字だった。被本塁打が6本と、もっとも少なかったメンドーサ(日本ハム)のゴロアウト率はディクソンの次に高い67.5%だ。
大谷翔平(日本ハム)はプロ1年目の2013年はゴロアウトとフライアウトの数が同じだったが、昨季はゴロアウトが147、フライアウトが104。ゴロアウト率は58.6%まで上がった。その影響もあってか、9イニングあたりの被本塁打率が2013年の0.58本から昨季は0.41本まで下がっている。
ゴロアウトの多さと被本塁打の少なさは、ある程度比例すると考えていいだろう。打たれれば確実に失点になる本塁打が減れば、当然、大量失点を防ぐことができるし、結果として勝てる確率は高くなると見てよい。
関連することとして、普段は多くゴロを打たせるタイプの投手が、ある試合でフライアウトのほうが多かったときは、たとえ無失点に抑えていたとしても「今日は調子がよくないのでは?」という判断するためのバロメーターとして捉えることもできるだろう。
昨季、規定投球回に達した投手の中でゴロアウト率が高かった上位10人は以下の通りだ。
1位 69.7% ディクソン(オリックス)
2位 67.5% メンドーサ(日本ハム)
3位 64.4% 菅野智之(巨人)
4位 62.3% 内海哲也(巨人)
5位 60.9% 岩田 稔(阪神)
6位 60.8% スタンリッジ(ソフトバンク)
7位 59.6% 石川歩(ロッテ)
8位 59.0% 井納翔一(DeNA)
8位 59.0% 金子千尋(オリックス)
10位 58.6% 大谷翔平(日本ハム)
やはり勝てる投手がズラリとならんでいる。ゴロを打たせる投手は、長打のリスクを最小限に抑えながら試合をしっかり作っているということに他ならない。
今季、彼らがどれだけゴロの山を築いていくか―。黒田の高度な投球術とあわせて投手を見るポイントにすると楽しみが増えるだろう。
文=京都純典(みやこ・すみのり)