様々な補償枠があり戦力均衡を徹底しているMLB
日本とはちがい、シーズン真っただ中の6月に行われるMLBのドラフト会議。今年は現地時間の6月8日から3日間に渡り行われた。30球団あり、それぞれの球団に複数のマイナーチームもあることから、計1215人もの選手が指名された。その数、実に日本の約10倍である。
MLBのドラフトは原則的に前年度の勝率が低い球団から順に指名していく、いわゆる「ウェーバー方式」を採用している。今年の場合、前年の最低勝率だったアリゾナ・ダイヤモンドバックスに全体1位の指名権があった。
ダイヤモンドバックスが指名したのは、ダンスビー・スワンソン内野手。バンダービルト大のショートで、大学生のショートが全体1位指名されたのは41年ぶりのことだった。
全体2位の指名権を持っていたのは、ヒューストン・アストロズだが、アストロズは前年の勝率がワースト2位ではない。昨年のドラフト、アストロズは全体1位でブレイディ・エイケン投手を指名したが、契約が不成立となった。その救済措置として今年の全体2位指名権を得たのである。
救済措置では、前年その選手を指名した枠のひとつ下の指名順位が与えられるのだが、アストロズは昨年1位でエイケン投手を指名し、契約不成立となったため、ひとつ下の2位で指名権を得たというわけだ。
そのエイケンのように、MLBドラフトでは指名拒否が日本よりも多く見られる。日本の場合は、希望する球団に指名されなかったからという理由が大半だが、MLBの場合は進学志望か、契約金での相違が主な理由だ。有望なアマチュア選手は早い段階から代理人と契約することもあり、そういったことも指名選手の契約不成立につながっているとも言われている。
契約不成立による救済措置以外にも、1・2巡目と2・3巡目の間に行われる戦力均衡枠やチームの状況により通常の指名枠のほかに、複数の補償枠を与えられる球団もある。こういった特別枠が多くあるため、今年のアストロズは全体2位と5位の指名権があった一方、最初の指名権が全体60位だったシアトル・マリナーズのようなケースもある。
スタジオにOBや有力選手の家族を招待
戦力の均衡といった点については日本以上に考慮し、徹底しているMLBのドラフトだが、以前は電話を使って事務的に指名選手をあげていくやり方だった。そのことからも、あまり注目を集めることもなく淡々と進行していたが、近年はショーアップ化されつつある。
場所もニューヨーク近郊のMLBスタジオで行われるようになり、公式サイトで生中継されるようになった。各指名選手の名前を壇上で読み上げるのは、MLBコミッショナーのマンフレッド氏である。
各球団のOBや、指名が有力視されている選手を家族とともに招待し、ちょっとしたお祭りのような雰囲気を作り上げている。全体3位で指名された、高校生ショートのブレンダン・ロジャースもスタジオに招待されていて、家族とともに抱き合って喜びを表した。
今年は第1回のドラフトから50年を迎えることもあり、第1回ドラフトで1位指名をうけたリック・マンデー氏のインタビューが流れるなど、歴史を大切にするMLBの姿も見ることができた。ドラフト上位候補の選手を映像もまじえながら紹介する点も含め、メディアの扱い方は日米で似てきたように感じる。
ところで、2013年のMLBドラフトでニューヨーク・ヤンキースから2巡目(全体66番目)で指名された加藤豪将選手だが、5月下旬に1Aのチャールストンから選手登録を外され、フロリダ州タンパでの延長キャンプに送られた。厳しい状況ではあるが、日本人で初めてMLBドラフト上位指名を受けた選手として、復調を期待したい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)