明治大時代は二刀流としても起用された逸材
プロ野球に限らず、スポーツ選手を評するときに潜在能力や身体能力といった言葉を使うことがある。「身体能力は素晴らしいものがある」といったように称賛の意味で用いることもあれば「潜在能力から見れば、もっと高い成績を残せるはず」といったように、奮起を促す意味で用いることもある。
日本ハムの2年目、岡大海外野手は潜在能力や身体能力といった言葉で評されることが多い選手のひとりだ。
岡は、明治大学の3年時までは投手としても、野手としても起用されていた。投げては150キロ前後の速球、走っては一塁まで4秒前後の俊足、打っても鋭い当たりを数多く見せた選手である。
しかし、東京六大学リーグで規定投球回に達したのは一度もなく、規定打席に達したのも3年秋から4年秋までの3シーズンだけと、絶対的なレギュラーではなかった。プレー全体に粗さがあったことも否めず、岡という選手を語る際には、「いい選手だけど…」と注釈がつくことも多かった。
それでも、2013年のドラフトで3位と高い順位で指名されたということは、日本ハムがそれだけ岡の潜在能力を買ったと言えるだろう。
岡はその期待に応え、2014年の開幕から一軍入りを果たしたが、5月上旬にケガで離脱。そのままルーキーシーズンを棒に振ることとなった。迎えた今季、2年連続で開幕を一軍で迎えた岡は、開幕直後こそベンチスタートが多かったが、陽岱鋼がケガで離脱したこともあり、5月以降はほとんどの試合でスタメンに名を連ねている。6月14日現在、54試合に出場し打率.270、4本塁打、21打点は大卒2年目の選手としては十分な成績だ。パンチ力も十分なうえ、補殺はチームトップの3と持ち前の強肩もいかんなく発揮している。高卒ルーキーの浅間大基とともに、陽の穴をしっかり埋めている。
盗塁失敗は一度だけ! 速く、強いスライディング
攻守ともに、その潜在能力を発揮している岡だが、なかでも目を引くのが足だ。ここまで盗塁を10回試み、失敗はたったの一度だけ。盗塁を10回以上試みている両リーグの選手で失敗が一度しかないのは岡だけだ。成功率の高さを生んでいる要因は、スライディングの速さである。ベースの手前でもスピードは緩むことはなく、速く、強いスライディングを見せる。
まだまだ粗さが目立つものの、これだけの成績を残している岡。投手からのコンバート組として糸井嘉男(オリックス)と比べられることが多く、「ポスト陽岱鋼」とも言われているが、このまま能力を磨いていけば、そう遠くない時期に両選手に肩を並べる日がやってくるかもしれない。
チームも首位争いを繰り広げている。そんな中、岡の潜在能力が大爆発するときを楽しみに待ちたい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)