バントが極端に少ない2番打者
昨季は屈辱の5位。オフも目立った戦力補強はなく、開幕前の予想で低い評価を受けていた西武だが、これまで39勝30敗4分で首位のソフトバンクに4.5ゲーム差の2位につけている。好調なチームを支える要因は、なんとってもその強力な打線だ。76本塁打はリーグトップで、12球団屈指の破壊力を誇る。
浅村栄斗、中村剛也、メヒアのクリーンアップと6番森友哉による中軸は、4人合わせて58本塁打203打点。とくに浅村、中村、森の「大阪桐蔭高出身トリオ」は、27日の日本ハム戦で計6打点を挙げるなど、すでに西武というチームにとどまらず、リーグを代表する存在となっている。
栗山の今季成績を見てみよう。打率.259はリーグ21位、本塁打は4本、打点も17と決して目立つ数字は残していないが、つなぎ役として見れば、抜群の働きを見せている。
2番打者、つなぎ役といってまず浮かぶ言葉はバントだろう。今季、パ・リーグで犠打を多く記録している上位3選手は今宮健太(ソフトバンク)が20犠打、安達了一(オリックス)が16犠打、鈴木大地(ロッテ)が15犠打で、いずれも各球団で最も多く2番打者として起用されている選手だ。そんな中、栗山が今季記録した犠打数は4。栗山はバントが少ない2番打者なのだ。
“意味のある凡打”でチームに貢献
バントは少ない栗山だが、しっかりとつなぎの役割は果たしている。
今季、初回に秋山が出塁した場面は29回ある。栗山はそのうち2回はバントで送り、9回で安打か四球で出塁している。率に換算すれば.310。併殺はたった2つしかなく、三振も3つと少ない。強攻策でも、栗山はしっかり結果を残しているのだ。
安打にならなくても、ゴロを転がして秋山を先の塁に進める打撃も頻繁に見ることができる。25日のソフトバンク戦の初回にはこんな場面もあった。
1回表に1点を先制された西武は、秋山がいきなり二塁打で出塁。続いて打席に入った栗山は最初の2球を見逃し、2ストライクに追い込まれた。しかし、そこからボールを見極め、際どい球はファウルし、フルカウントまで持ち込んでいく。9球目の高めに浮いたストレートを打ち、結果はセンターフライに終わったが、タッチアップした秋山を三塁まで進めた。続く浅村の遊ゴロで秋山は本塁に還り、西武は同点に追いついた。栗山の打席は記録ではセンターフライだが、西武の得点に貢献したと言える、意味のある凡打だった。
どうしても、秋山や中軸選手に目を奪われがちだが、栗山のような選手が打線にひとりいるだけで間違いなく流れが生まれる。数字には見えない、しぶとい打撃をする栗山のような選手の存在があることで、相手から見れば、じわじわと追い込まれているような感覚に陥るだろう。仕事をきっちりこなせる栗山が、これからの残り試合でチームにどれだけの得点をもたらしていくか。大いに注目したい選手である。
文=京都純典(みやこ・すみのり)