1位黒田博樹(広島)145票、2位菅野智之(巨人)103票。
プロがプロを選ぶオールスター選手間投票のセリーグ投手部門は、ファン投票に続き日本球界に8年ぶりに復帰した黒田が選出された。昨年の選手間投票では菅野が326票を獲得し、2位前田健太に200票近い大差をつけたが、2015年の夢の球宴は名実共に男気イヤーとなった。
毎年、選手間投票で上位に食い込む菅野。プロ3年目を迎えた今季はここまで6勝を上げ、防御率1.93はリーグトップ。しかしすでに年間6敗は自己ワーストタイ。6月は未勝利に終わり、月間で自身借金2もワースト。昨年までの2シーズンは通算は25勝11敗と負け数の少ない投手だっただけに苦戦している印象が強い。
だが、実際の投球内容を見てみると先発登板13試合中、11試合でQS(6回以上で自責点3以下)を達成。打線の援護には恵まれないものの、エースとして充分な働きを見せている。それでも、感じる物足りなさは、恐らく順調すぎたプロ2年間のイメージが強すぎるからだろう。
1年目は13勝を挙げ、日本シリーズでは楽天の田中将大にその年唯一の黒星を付けた背番号19。2年目の昨季は初の開幕投手を務め、夏場に故障離脱するも最優秀防御率のタイトルを獲得。終わってみればMVP記者投票も両リーグ最多の1115点(セ2位山田哲人は344点)を獲得するぶっちぎりの選出。現役時代の原監督(プロ3年目の83年MVP)を上回る、プロ2年目での受賞となった。
今季開幕直後、菅野にインタビューした際、興味深いことを口にしていた。シーズンを通してのペース配分の重要性についてだ。「去年は2回離脱していますし、今年は特にそこを意識して投げるようにしています。今までは全員のバッターに全力でいっていたので、どうしてもいっぱいいっぱいになる。実際に春先が一番成績が残ってると思いますし」
だから、3年目の今季は意識を変えたと菅野は言う。「今年の開幕戦なんかは特にそれ(ペース配分)ができた試合でした。年間で考えた時にも、春先にあんまり力を使いすぎなければ、夏場の一番苦しい時に勝負できていくんじゃないかな」と。
つまり、目の前の一試合をがむしゃらに投げるのではなく、主戦投手としてローテをど真ん中で支えることを意識する3年目のシーズン。混セはまだまだ続く。絶対に負けられない戦いはこれからだ。
現在、セリーグで防御率1点台は菅野ただひとり。巨人の投手が2年連続の最優秀防御率獲得となれば、89年と90年の「平成の大エース」斎藤雅樹以来の快挙となる。
超えていけ。過去も、私も。
今、3年目の菅野智之は杉内や内海ではなく、斎藤や上原といった過去の歴代エースたちと競っている。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)