センターラインを固定できない球団が多い今季のセ・リーグ
キャッチャー、セカンド・ショートの二遊間、センターは、「センターライン」と呼ばれ、野球の要とも言われている。要である以上、このポジションに確固たる選手を少しでも多くの試合で起用したいと、どのチームの監督も考えているはずだ。
今季のセ・リーグは史上空前の大混戦となっているが、多くの球団でセンターラインが固定できていないのもその一因だろう。
巨人は、ショートの坂本勇人こそ固定できているが、セカンドは50試合に先発している片岡治大がケガで離脱し、計5人の選手がスタメンで出場。キャッチャーも5人、センターは6人もの選手がスタメンで出場している。
阪神は二遊間こそ鳥谷敬と上本博紀でほぼ固定されているが、鳥谷の守備範囲は昨季から極端に狭くなり、以前のような安定感は見られなくなった。
中日は長年の課題と言われる「ポスト谷繁」が相変わらず確立できず、セカンドも荒木雅博と亀沢恭平の併用が続き、DeNAはキャッチャーが3人、ショートは4人の選手がスタメンで出場と固定できていない。
ヤクルトも、FAで獲得した大引啓次がケガで離脱した期間は、これまで同様に守備面で悩まされた(先日、大引が復帰したこともあり、この先落ち着いてくる可能性はある)。
このようにセ・リーグのほとんどの球団がセンターラインで悩む中、広島はキャッチャーこそ会沢翼と石原慶幸の併用が続いているが、セカンド・菊池涼介、ショート・田中広輔、センター・丸佳浩は開幕から固定されている。とくに、菊池と田中による二遊間コンビの活躍が目覚ましい。
シーズン補殺の日本記録を持つ菊池、更新する可能性がある田中
打撃面では菊池が打率.273、6本塁打、18打点でリーグトップの32犠打。田中は打率.292、5本塁打、28打点。三塁打6本はリーグトップと打撃でもそれなりの数字をたたき出している2人だが、その打撃以上に光っているのは何よりも守備の面である。
セカンドの菊池は2013年に528補殺(※)を記録し、中日・荒木が持っていた二塁手のシーズン補殺記録を更新すると、昨季は535補殺と自身の記録を更新。その守備は「規格外」とも表され、打球に対する一歩目の速さ、グラブさばきや身のこなしに、プロ野球ファンなら一度は目を奪われたことがあるだろう。
今季はここまで247補殺で昨季と比べてペースは落ちているものの、リーグトップの数字を叩き出しており、この先取り戻す可能性は十分ある。
ショートの田中も数字で見てみよう。失策8はセ・リーグのショートで最多、守備率.977も最低だが、258補殺はダントツの成績だ(2位は中日・エルナンデスの209補殺)。ショートのシーズン補殺の日本記録は中日の杉浦清が1948年に樹立した502だが、田中はこのペースでいけば499補殺となり、日本記録にも届く可能性がある。
広島の投手陣はエースの前田健太をはじめ、黒田博樹、ジョンソンとゴロを打たせる術に長けている投手が多い。必然的にゴロの打球を処理する機会が多くなるのだが、それでもこれほどまで補殺を重ねられるのは見事としか言いようがない。処理数が多いゆえ失策も多くなるが、田中の守備は明らかにチームに貢献している。
ともに、補殺が多い菊池と田中の両選手。菊池の守備範囲の広さは改めて言うまでもないが、捕ってから投げるまでの早さ、肩の強さや正確性も12球団でトップクラスだ。田中も、もともと守備には定評があったが、今季は守備範囲が広くなり、送球の正確性も増した。三遊間への深い位置で捕っても、難なくアウトにできる。補殺の数が増えていくのも当然だ。
また、二遊間はコンビとしての“間合い”も大切と言われるが、今季のオープン戦を見ていて、グラウンドを足でならす仕草やグラブを構えるタイミングなど、菊池と田中のタイミングがぴったりと合うことが何度もあった。合わせようとしているのではなく、自然と合ってきたのではないか。
開幕前は優勝候補に挙げられながら、チーム全体としては本来の力を発揮しているとは言えない広島。打線の調子も上向きつつあるなかで、菊池と田中を含めたセンターラインが確立されているのは間違いなく強みとなるだろう。
これから勝負の夏場を迎えるにあたり、守備力がペナントの行方を左右する場面も多く出てくるはず。12球団屈指の二遊間コンビが、24年ぶりの優勝へと導けるだろうか。
(※数字は6日現在)
<※補殺>
打者や走者がアウトになったとき、タッチアウトや打球と捕ったことで直接アウトを奪った野手には「刺殺」が記録される。一方、ゴロなどの打球を捕球し、送球などで打者や走者をアウトにしたときは、送球した野手に「補殺」が記録される。また、中継プレーで、外野手-内野手-捕手に渡り、本塁で走者をアウトにした場合は外野手と内野手に補殺が記録される。
文=京都純典(みやこ・すみのり)