コラム

夏場に猛打ふるうヤクルトが過去の常識を覆す

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首位を走るヤクルトの真中満監督©BASEBALLKING
真中満,

過去10年、先発防御率トップのチームが優勝9回


 開幕からいまいち元気のなかったヤクルト打線がようやく目を覚ました。後半戦は6試合で84安打48得点。1試合平均14安打8得点と、まさに打線爆発といった様相だ。総得点もDeNA、広島を一気に抜き去り、リーグトップに躍り出た。

 セ・リーグの打撃3部門上位に名を連ねる、山田哲人、畠山和洋、川端慎吾のほか、ここにきて、雄平、大引啓次、中村悠平、デニングらに当たりが出てきており、打線のどこからでも点が取れるようになったのがその要因だろう。

 本塁打が出やすい神宮球場がホームグラウンド。得点の入りやすい本拠地だということも手伝い、もともと得点力の高いヤクルトだが、もちろん、逆に失点も多いチームでもある。先発防御率3.90はリーグワースト。

 野球が得点を競うゲームである以上、先発陣が安定しており防御率が低いチームが強いのは当然の理屈だ。ここ10年で先発防御率トップのチームがシーズン優勝を逃した例はわずかに1回だけ。2位に終わった2013年の阪神だけである。

 ヤクルトファンにとっては知りたくなかったデータかもしれない。本来であれば先発陣の奮起に期待したいところだが、館山昌平が復帰したとはいえ、小川泰弘、石川雅規、成瀬善久らがそろってピリっとしない状況では、大きな改善は期待できそうもない。


リーグ屈指のリリーフ陣と打線で先発陣をカバーできれば……


 しかし、前代未聞の大混戦である今季のセ・リーグには、例年のデータが通用しない部分も数多く見受けられる。こんなシーズンだからこそ、過去の優勝チームとは全く違うタイプのチームが優勝する可能性もあるだろう。

 幸い、ヤクルトにとって朗報といえるデータもある。昨季は4.62とダントツの最下位だった救援防御率は、先発防御率とは対照的に2.30と大きく改善し、逆にダントツのリーグトップ。ロマン、オンドルセク、バーネットの助っ人3人を中心としたリリーフ陣はリーグ随一だ。

 また、復調した打線にもさらなる追い風が吹く。ただでさえ強力なヤクルト打線だが、統一球が変更された2013年以降の2年間、特に夏場の8月に強さを発揮しているのだ。もちろん、投手に疲労が現れる夏場は、どの球団も得点が増す傾向にある。ただ、ヤクルトの場合、その“増加率”が図抜けている。

 ヤクルト以外5球団における2シーズン通算の1試合平均得点は4.04であり、8月に限れば4.30。通算平均得点に対する増加率は106%だ。一方、ヤクルトの2シーズン1試合平均得点は4.32であり、8月は5.14。そもそも得点が多い上に、増加率は119%。もちろんこれは、球団別で比較してもトップの数字である。

 今季、出だしこそ低調だった打線だが、7月の平均得点は5.35とあからさまに調子を上げてきている。さらに、8月半ばにはリハビリ中のバレンティンが復帰するという話もある。

 投手の疲労がピークに達するといわれる夏場に、先発陣のコマ不足を補って余りあるほどに、打って打って打ちまくれば……過去の常識を覆す結果を呼び込むことになるかもしれない。

文=清家茂樹(せいけ・しげき)
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