大野は2桁勝利目前で足踏み状態、菅野は援護に恵まれない
シーズンも終盤に進むにつれ、ペナントの行方とともに気になり始めるのが個人タイトル。未曾有の大混戦となっているセ・リーグのペナントレースだが、同様に最多勝争いも激戦。パ・リーグでは、完成度が昨季よりさらに高まった大谷翔平が勝利数でも頭一つ抜けているが、セ・リーグは完全に団子状態にある。
前田健太(広島)、大野雄大(中日)、藤浪晋太郎(阪神)の9勝を筆頭に、8勝には菅野智之(巨人)、マイコラス(巨人)、ジョンソン(広島)、能見篤史(阪神)、久保康友(DeNA)の5人が名を連ねる。その中からタイトルを獲得するのは果たして誰だろうか。
今季、大きく成長した大野は、開幕から順調に勝ちを重ね、7月8日までに3完封を含む9勝を挙げた。10勝一番乗りは間違いないと思われたが、2桁勝利を目前に4連敗を喫し足踏み。援護に恵まれなかった試合もあるにせよ、4連敗中は被打率.313、防御率5.02と、明らかに調子を落としている。
昨季、最優秀防御率のタイトルを獲得した菅野は、今季も安定感抜群の投球を繰り広げている。防御率1.79は、両リーグ唯一の1点台だ。しかし、味方打線の援護に恵まれず、勝利数はいまいち伸びていない。6月19日の中日戦は7回で自責点1、7月12日の阪神戦は7回で自責点1、7月30日のDeNA戦では8回で自責点0。万全の投球を披露しながら、これら3試合では菅野に勝ちがつかなかった。
大野の停滞、好調・菅野が勝ちに恵まれないことが、現在の混戦を生んだともいえそうだ。
「暑さ」がタイトルの行方を左右する!?
一方、開幕直後は不調だったが、徐々に復調してきた投手もいる。マイコラスは開幕2連敗を喫するなど出だしでつまずいたが、6月20日の中日戦から負けなしの6連勝中だ。直近7試合連続でQSを達成するなど、投球内容も安定し、一気に最多勝争いに割って入ってきた。
首位・阪神の藤浪は9勝、能見は8勝と、最多勝を狙える位置につけている。しかし、どちらも連勝や連敗が目立ち、手がつけられないような投球を見せたかと思えば、大量失点で大崩れする試合も見られ、安定感という面ではやや不安が残りそう。
安定感といえば、前田はさすがの一言。19試合に先発し、QSを逃したのはわずかに2試合。QS率89.47%はリーグトップの数字だ。これまで、数々のタイトルを手にしてきた右腕だけに、経験値も抜群。これから一気に追い込みをかけるか。
さて、肝心のタイトルの行方についてだが、思わぬ要素が影響を及ぼすかもしれない。「暑さ」である。全国的に酷暑に見舞われている今年、選手は例年以上に疲労が蓄積しているはず。もちろんそれは、投手に限った話ではない。7月30日のヤクルト戦(神宮球場)では、シアーホルツ(広島)が熱中症のために途中交代した。最多勝を争う投手だけでなく、援護する野手も暑さ対策をこれまで以上に行う必要がありそうだ。
8月は6球団それぞれ26試合を戦うが、その中で、ドーム球場での試合数は中日が20、巨人が17と続き、阪神とDeNAが9、広島が6、ヤクルトに至ってはわずか3試合だ。暑さを気にせず戦えるドーム球場を多く使用できるチームが有利と見ることができるが、果たして最終的に誰がタイトルを手にするだろうか。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)
※記録は8月9日時点