108球目の内角低目のスライダーをレフトスタンドへ運ばれた。
9日、広島戦(東京ドーム)で先発した巨人の田口麗斗は、7回二死まで無失点投球を続けるも、鈴木誠也に同点ソロを浴びた。勝ち星は逃したものの7回116球を投げ4安打1失点。先発した過去5試合は5回68球、6回97球、4回71球、5回84球、5.2回94球と中盤に力尽きる明らかなスタミナ不足を露呈していただけに、本人にとってもベンチにとっても収穫の大きい一戦となった。
「田口は腕の振りがいい。縦スラ横スラ、器用でなんでも投げちゃう。直球のキレもいいですね」
昨オフ、巨人の鬼屋敷正人捕手にインタビューした時、二軍の注目若手投手について聞くと名前が挙がったのが田口だった。19歳のサウスポーは今季9試合に先発し、2勝4敗、防御率2.76。打線の援護には恵まれないものの高卒2年目投手としては上々のシーズンを送っている。
身長171センチ、広島出身、登場曲は同郷のスーパースター矢沢永吉の『ファンキー・モンキー・ベイビー』。サッカーブラジル代表のネイマールのファンで、少年時代は野球とサッカーどちらをやるか迷ったという。好きな食べ物はイチゴ、まだあどけなさの残る背番号90。
今後、巨人首脳陣はこの19歳のプロスペクトをどう育てて行くのだろうか?
V3を支えてきた杉内俊哉と内海哲也の両左腕が怪我や不調で調整中。30代中盤に差し掛かった彼らに代わる先発左腕の育成は急務だ。今村信貴や松本竜也といった他の左の先発候補が伸び悩む中、近年の巨人では1軍ローテに定着した高卒サウスポーはいないだけに、田口に懸かる期待も大きい。
個人的には、不調に喘ぐ山口鉄也の負担を軽減させる「左のセットアッパー」として起用しても面白いと思う。今季49回で48奪三振と空振りを獲れる能力もあり、マウンド度胸も申し分ない。広島新庄高時代は同学年の松井裕樹(現楽天)と超高校級左腕の「東の松井、西の田口」と並び称された逸材。先発投手の多いチーム事情で1軍と2軍を往復するくらいならば、球団新記録の23セーブを挙げている松井のようにリリーフとして場数を踏むのも、将来を考えれば決してマイナスにはならないだろう。
目指すは次代の杉内か?それともポスト山口として起用するのか?
巨人の未来を担う田口麗斗は9月14日にハタチの誕生日を迎える。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)