プロ1号は弾丸ライナーでレフトスタンドに飛び込んだ。
5日、DeNA戦(横浜)で巨人ドラ1ルーキー岡本和真が代打で登場すると初球を強振。通算3打席目でプロ初安打初打点。19歳2カ月での代打弾はチーム最年少記録を更新した。
そして、この試合「7番レフト」で先発出場した大田泰示も4打数3安打1打点と猛打賞の活躍。右の大砲として期待される新旧ドラ1コンビの揃い踏みに、試合には負けたものの多くの巨人ファンは拍手を送った。
岡本の「背番号38」は長嶋茂雄の栄光の3番と原辰徳が現役時代に背負った8番を合わせた番号で、原監督自身が希望したものだという。つまり巨人は将来の4番打者として育てようと岡本をドラフト1位指名したわけだ。
今は44番をつける大田も、新人時代は偉大なる松井秀喜の「55番」を球団から託された。周囲からの過剰な注目。その重みに耐えきれず苦しんだ大田もプロ7年目のシーズンを迎えた。今季は1軍と2軍を行き来しながらも、ここまでキャリア最多の52試合に出場し打率.283を記録している。
開幕直後、岡崎二軍監督にインタビューした際、「大田の持っているキャラクター、明るさやエネルギー、身体がデカくてスピードのあるプレーの迫力。すべてをまとめて華がありますよね。二軍は彼がいなくなって元気がなくなったんですよ」とその魅力を語ってくれた。
今の巨人にはマンネリとも言える停滞した雰囲気を変えられる選手が必要だ。長年チームを支えてきた阿部慎之助や村田修一に年齢的な衰えが見え始め、昨オフに右肘と右膝を手術した長野久義も極度の打撃不振に苦しむ巨人打線。助っ人野手の補強にはことごとく失敗。チーム打率.243はリーグ最低。ムードメーカー矢野謙次はすでにトレードでチームを去った。
今季チーム最多本塁打は長野と阿部のわずか13本。年間20本塁打以上の打者が1人も出なければ巨人では1960年以来55年ぶりの屈辱である。待ち望まれる和製大砲の出現。
そんな中、飛び出した岡本の松井秀喜以来22年ぶりの高卒ルーキー本塁打。自軍ベンチは盛り上がり、スタンドのファンも大歓声に包まれた。恐らく、この一発は岡本だけでなく大田にとっても大きな意味を持つはずだ。なぜなら、これまで一人で背負ってきた「次代の松井秀喜」を共有できる選手が現れたのだから。
55番は一人では重すぎた。でも、二人ならなんとかなるかもしれない。25歳大田と19歳岡本の「ゴジラのワリカン」である。
数年後、阿部や村田が現役を退く頃、果たして巨人のクリーンアップは誰が打っているのだろうか?
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)