コラム 2015.11.16. 17:00

日本球界におけるFA制度のあり方は正しいのか?

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海外FA権を行使したソフトバンクの松田宣浩 [BASEBALLKING]

取得する日数、年数に日米の違い


 今年もフリーエージェント権(以下FA権)を持つ選手の動向がメディアを賑わせる季節になった。ただ、一口にFA権といっても日米間で様々な違いが存在する。

 まず、取得できる期間が違う。MLBでは、40人枠に登録された日数が172日間で1年と換算し、それが6年(1032日間)に達すればFA権を取得できる。

 一方、日本では、一軍登録の日数が145日に達すれば1年と換算する(登録日数が足りなかった年のみの日数を合計し145日ごとに1年とする)。それが8年になったら国内球団への移籍に限った「国内FA権」を取得。さらに1年を加え9年になったら海外の球団へも移籍が可能な「海外FA権」を取得できるというシステムだ。

 今年の場合だと、高橋聡文(中日)と脇谷亮太(西武)が国内のみのFA権を行使。田中浩康(ヤクルト)、木村昇悟(広島)、松田宣浩(ソフトバンク)、今江敏晃(ロッテ)が海外FA権を行使した。このうち、田中浩康は宣言した上でのヤクルト残留がすでに決まっている。


宣言が必要な日本、その必要がないMLB


「田中浩康は宣言した上でのヤクルト残留」と書いたが、ここに日米で大きな違いがある。
 
 日本では、FA権を取得した選手が権利を行使する場合、日本シリーズ終了の翌日から土・日・祝日を除く7日以内にコミッショナー宛に文書で申請する必要がある。その後、コミッショナーよりFA宣言選手として公示され、翌日より他球団との交渉が可能になる。

 MLBではワールドシリーズ終了の翌日から5日間は所属球団に独占交渉権が与えられ、その後は他球団との交渉が可能となる。MLBでは、選手がFA権の行使を宣言する必要はなく、独占交渉権の間に契約を結べなかった選手は自動的にFAとなるのである。

 先日、FA権の行使を宣言した今江敏晃が会見で涙を流したが、ああいった場面をMLBで目にすることはない。なぜならば、宣言するかどうか迷う必要がないからだ。

 今江に限らず、FA権を宣言する際に涙を流す選手が結構いる。メディアはそういった涙をセンセーショナルに書きがちだが、果たして「権利の行使を宣言する」という段階は必要だろうか。球団のなかには、「FA宣言するなら出て行け!」とばかりに、FA権を宣言した後の残留を認めていないところもある。そういった、精神的にも抑圧させるような仕組みが、日本でFA市場が活発化しない要因となっているのではないだろうか。

 FAは、選手がキャリアを積んだことで得た、自分の職場を自由に選べる権利のはずだ。自由に選べる権利のはずが、その自由を選ぶかどうかで選手に負担をかけるのはやはりおかしい。FA権を取得した選手が「他球団の評価も聞いてみたい」と言っても、球団に残るか出るかを決めろと言われては評価を聞くこともできない。

 宣言する必要があるというだけで、FA権がある意味形骸化しているような気がしてならないが、球団や選手たちはどのように考えているのだろう。

文=京都純典(みやこ・すみのり)
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