パ・リーグ新人王は小学生から投手一筋!
11月25日に行われた「NPB AWARDS 2015」。リーグMVPの柳田悠岐(ソフトバンク)、山田哲人(ヤクルト)ら今年のペナントレースで活躍した選手を表彰する場で、2015年度の新人王も発表された。
セ・リーグは山崎康晃(DeNA)、パ・リーグは有原航平(日本ハム)。大学卒のドラフト1位投手が、それぞれ選出された。
有原は、1992年8月生まれの23歳。広島県広島市出身で、幼い頃はサッカーをやっていたそうだ。
2歳上の兄の影響で野球を始め、広島市立緑ヶ丘小学校2年生のときに河内少年野球クラブに入団。そこから、投手一筋だという。広島市立三和中学校では、軟式野球部に所属した。
中学卒業後は、甲子園優勝経験もある超名門・広陵高校へ。2学年上に中田廉、上本崇司(ともに現・広島)らがいるなか、「厳しかったです…」と振り返る日々を送った。
そんななかで頭角を現し、2年春からベンチに入った有原。秋の大会ではエースとして力を発揮し、翌年春の甲子園に出場。2回戦では浜田智博(現・中日)がエースの宮崎工業高に勝ち、準々決勝では磯村嘉孝(現・広島)が主将の中京大中京高(愛知)に勝利した。
決勝進出をかけた準決勝では、高山俊(のちに明治大→阪神)、横尾俊建(慶應義塾大→日本ハム)らがいた日大三高(東京)に14対9で敗れたが、4試合で奪った三振は37個。剛腕・有原を印象づけた。
しかし、有原はその後右ヒジ痛に見舞われる。夏の県大会は登板を回避しつつ、甲子園に出場。初戦で2年生エース・歳内宏明(現・阪神)を擁する聖光学院高校(福島)に敗れ、高校野球を終えた。
190センチ近い長身の大器としてプロ注目の投手ではあったが、プロ志望届は提出せず。甲子園で戦った磯村、現在のチームメートである西川遥輝(智弁和歌山高→日本ハム)らがドラフト指名を受けるなか、早稲田大学進学という道を選んだ。
ちなみにその年、2010年のドラフトの目玉だったのが「早大三羽烏」と呼ばれた斎藤佑樹(現・日本ハム)、福井優也(現・広島)、大石達也(現・西武)の3人。有原は、大学球界を湧かせたスター選手と入れ替わりで入学した世代になる。
なお、入学した年の4年生には高校の先輩でもある土生翔平(現・広島)がおり、同級生には中村奨吾(現・ロッテ)がいた。
5月のデビューで初先発・初登板・初勝利!
早稲田大では1年春のリーグ戦、開幕2戦目からリリーフ登板。いきなり、自己最速の150キロを投げてみせた。2年春にはリーグ戦優勝と、全日本大学選手権優勝を経験する。
2年秋からは先発に定着し、3年秋には防御率0.72で最優秀防御率をマーク。さらに4年春には、リーグ最多の5勝をあげてベストナインにも選出される。この時にはMAX156キロ右腕として、ドラフトの目玉となっていた。
しかし、高校時代から痛めている右ヒジに不安を抱えており、球団側にはドラフト指名をためらう声もあった。それでも、日本ハム、DeNA、広島、阪神の4球団が1位指名で競合。日本ハムが交渉権を獲得した。
契約金1億円プラス出来高払い5000万円、年俸1500万円(推定)で仮契約を済ませた有原は、「ケガをしているにも関わらず、すごく高い金額を出していただいて感謝しています。チームの力になれるようにしたいです」と話している。
ずっとノースローで調整してきたということで、春のキャンプは二軍スタート。しかし、そのブルペンで右ヒジに痛みを感じず投げられたことで自信を得た。
体重移動などフォームの改善によって、右ヒジへの負担は軽減。開幕には間に合わなかったが、5月15日のオリックス戦で先発として初登板を果たすと6回4安打2失点でプロ初勝利。パ・リーグの新人の中で初勝利一番乗りと「初」づくしの歓喜に、「最後の打者を打ち取ってもらったとき、すごくホッとしてうれしかったです」と素直に喜んだ。
そこから先発に定着すると、9月5日には初完投を初完封で飾る。さらに、ロッテと戦ったCSファーストステージでは、プロ初のリリーフ起用。第2戦はピシャリと抑えて勝利投手となった。
しかし、続く第3戦では1対1で迎えた7回、デスパイネにホームランを打たれて負け投手に。ファイナルステージ進出を逃し、1年目のシーズンを終えることになった。
1年目は、レギュラーシーズンの18試合はすべて先発としての起用。8勝6敗、防御率4.79。この結果での新人王選出に、自ら「まさか、選ばれるとは思っていませんでした」とコメントした。
喜びを語る中、規定投球回に到達していない103回1/3と、4点台後半の防御率については、「もちろん改善すべき」と自覚。「いい試合と悪い試合の差がはっきりしていた」と分析している。
右ヒジに不安を抱えてのプロ入りながら、5月半ばからローテーションを守った男。2年目はもう右ヒジを言い訳にはしないだろう。「来年は生まれ変わった投球を、開幕からシーズンを通して安定した投球をしたいです」という言葉に、来季への明確なビジョンが見える。
北の大地に渡った大器の成長を、誰もが楽しみにしている。
文=平田美穂(ひらた・みほ)