制球力を向上させメンタルの強さを手に入れた
12月3日、福井優也(広島)が契約更改交渉に臨み、2000万円アップの推定年俸4200万円でサインした。
学生時代、ともに「早稲田三羽烏」と呼ばれた斎藤佑樹(日本ハム)は200万円ダウンの2300万円、大石達也(西武)は300万円ダウンの1100万円でサイン。プロ入り前、3人のなかで最も評価が低かった福井が、実績でも年俸でも“逆転”を果たしたことになる。
福井にとってふたりは盟友であると同時にライバルだが、福井にはもっと高みを目指してもらわなければならない現実がある。エース・前田健太のメジャー挑戦をチームが容認し、黒田博樹の去就はいまだ不明。来季の福井には、他球団のエースに投げ勝つ投球が求められる。
ルーキーイヤーの2011年に8勝を挙げるも、その後は伸び悩んでいた福井だが、今季は自己最高の9勝を挙げ、初めて勝ち星を先行させた(6敗)。課題の制球難は大きく改善。今季の与四球率は3.63だ。この数字自体、決して褒められた数字ではないのだが、福井の過去の与四球率は2011年から順に4.18、5.68、5.03、4.35であり、福井個人としては大幅に制球力が向上したといえる。
また、精神的な変化も好結果の要因だろう。開幕前のインタビューでは「チームメートに素直に弱音をさらけ出すことで心にゆとりを持てるようになれた」と答え、シーズン中には黒田の「100点満点を目指さなくていい。試合を作ることに集中しろ」という助言により「精神的に安定してきた」と語った。
シーズン最終盤での勝負強さが求められる
しかし、福井が新たな鯉のエースとなるには、まだまだ改善点は多い。先述した与四球率ひとつ取っても、今季の黒田博樹は1.54(リーグ2位)、前田健太は1.79(リーグ4位)と、福井とは大きな開きがある。また、夏場以降に息切れするのも大きな課題だ。
今季の福井は8月22日の巨人戦で9勝目を挙げて以降は5試合で0勝3敗。藤浪晋太郎、能見篤史(ともに阪神)、大野雄大(中日)ら、他球団のエース級と対戦したという点には同情の余地があるが、CS出場枠を争っていた勝負どころで勝てなかったことはやはり悔やまれる。
過去5シーズン通算で見ても、9月以降の登板に限ると17試合に先発し2勝10敗。単純にスタミナの問題なのかは不明だが、シーズン最終盤に勝ち星を挙げられないのだ。
来季、福井は投手キャプテンを務める。求められる役割や期待、責任を、今季手に入れたメンタルの強さで力に変え、勝負どころで勝てるキャプテン、そして新エースに……。福井が新たなステージへと駆け上がる。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)