キング・中村剛也がこだわる“スタンドティー”
2月1日に各球団スタートした春季キャンプも、いよいよ最終盤に突入。オープン戦もはじまり、チームも仕上げの段階に差し掛かっている。
キャンプでの練習は、一般的には10時前後からウォーミングアップが始まり、キャッチボールやペッパー、投内連係と練習メニューが進んでいく。その後、投手陣はブルペンでの投球練習やトレーニング、野手陣はノック、フリー打撃や総合練習が入り、全体練習後は個人メニューやランメニューというケースが多い。
特に、フリー打撃中にバックネット前で行われるティー打撃や、個人メニューで行われるロングティーなどを見ていると、その選手の取り組みや傾向を垣間見ることができる。
今回のキャンプで印象的だったのが、西武・中村剛也のフリー打撃。打球が南郷スタジアム左翼後方にある民家の屋根を直撃するなど、3年連続7度目となる本塁打王のタイトルに向けて好調さをアピールした。
その中村、全体練習後のロングティーでも快音を飛ばし、大きな当たりを放っている。ただ、他の選手と異なるのがスタンドティーを使って打っていることだ。
通常のロングティーは投げ手が斜め前からボールをトスし、バッターが打つというケースが多い。しかし、中村はティー打撃でもスタンドティーを使っている。トスされたボールを打つよりも、ボールが止まった状態から打つ方が難しいのだが、そこには「このポイントでボールを捕らえて、ホームランを打つ」という中村の強い意図が見て取れる。
選手の“意図”が見える練習
ティー打撃といえば、現在は巨人でプレーする片岡治大が西武時代に行っていた、「一風変わった」ティー打撃が印象的だ。
通常、ティー打撃はネットに対面して構えるのに対し、片岡はネットと平行の状態になって立ち、投げ手はキャッチャー方向からトスを行う。
ボールがトスされると、片岡は真横のネットに向かってボールを打ち返していく。それはなぜか…。シーズン中の片岡のバッティングを見ると、その意図が分かってくる。
2ストライクに追い込まれた片岡は、一塁方向へファウルを打って粘る。その打ち方は、まさにキャンプ中のティー打撃で見た光景と一緒だった。
一球でも多くファウルで粘り、ピッチャーの球数を増やす役割を求められる片岡にとって、それは当然のように行う練習法だったのかもしれない。
一昨年は最多安打、昨年はトリプルスリーと一気に球界を代表する選手にまで成長したヤクルト・山田哲人も、大化けの裏には地道な練習があった。
杉村繁打撃コーチと試合前のルーティンとして行っていたのが、約10種類のティー打撃。これを継続して行い、その打撃を高めていった。
フリー打撃だけが打撃練習ではない。キャンプ中に見られるティー打撃にこそ、その選手を探るヒントが隠されている。