コラム 2016.02.26. 06:30

かつての栄光を取り戻す為に…中日・野本圭の逆襲

かつてのドラ1が31歳でかける再起


 「立浪選手が目標です。今は雲の上の人ですけれど、いつかは自分も2000本打ちたい」――。

 2008年、無限の可能性に満ち溢れ、野球の神様に愛された一人の青年は、こう希望を語った。

 前年に日本一のタイトルを獲得した中日ドラゴンズと、名将・野村克也監督率いる東北楽天ゴールデンイーグルスが競合したほどの逸材は、中日が交渉権を獲得。鮮烈にプロの舞台へと駆け上がる。

 当時の中日・落合博満監督が、スカウトを説き伏せてまで1位指名を希望したその選手。野本圭、31歳。彼は今、光を手繰り寄せようと、苦しみの中でもがいている。


挫折を努力で乗り越えた苦労人


 駒沢大学4年の時には日本代表にも選出されたが、ドラフトで声がかかることはなかった。そして、無念を噛み締めながら、日本通運で白球を追いかける道を選択する。

 当時、野本を指導した神長監督は「ダッシュひとつをとっても、100%の力を出し切るような姿勢がある」と、才能に溺れることなく、ひたむきに努力する野本の姿勢を讃えた。

 そして、血の滲むような努力は結実し、中日スカウト陣に「社会人ではナンバーワンの野手」と言わしめるほどに成長。大学時代に味わった無念を動力に、夢の舞台を自らの力で勝ち取ったのだ。


もう「若くない」が、まだ「終わり」ではない


 あれから7年……。野本はニ軍から再起をかけたシーズンを迎えている。今年で32歳を迎える彼を“若手”と呼ぶ者は、もういない。

 昨シーズンは4月に一軍登録されるも、わずか4日後に登録抹消。その後、ウエスタンリーグでアピールを続けるも、招集は見送られ、ようやく声が掛かったのはまもなくシーズンを終えようとする10月の初めだった。登録抹消時に「腐らずやるしかない」と気を吐いた彼の言葉が耳に残る。

 プロ入り後はルーキーイヤーこそ新人らしからぬ活躍で周囲を驚かせたが、その後は怪我の影響もあり、本意ではない多くの時間過ごしてきた。一軍とニ軍を行き来し、かつての栄光は過去のもの。苦渋を舐める日々が続いた。

 しかし、野本圭は野球界における過去の存在では断じてない。球団に自身を戦力と認めさせ、首の皮一枚だろうが実力社会の中で生き抜いてみせたのだ。

 最後の1球まで何が起こるか分からないなど、語るに足らぬ野球界の常識。「雑草魂」が一輪の花を咲かせるその日を夢見ている。

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