ピンチで攻める姿勢を貫いた原樹理
本格的にオープン戦が始まり、選手たちは生き残りをかけた戦いの真っ最中。主力の仕上がり具合はもちろん、戦力の上積みとなりうる新外国人や新人選手たちにも注目が集まる。
そのなかでも、セ・リーグの“ドラ1”選手たちが揃って好調だ。
3日のDeNA戦、オープン戦2度目の登板となったヤクルト・原樹理は4回を4安打無失点の好投。3回裏、二死一二塁のピンチでは、相手の主砲・筒香嘉智に対して内角高めのカットボールで勝負を挑み、遊飛に打ち取った。
2月21日の阪神戦でも、ピンチの場面で攻める姿勢を披露。初回にピンチを招くも、陽川尚将の内角を得意のシュートでえぐり、見逃し三振に斬って取った。
これで2試合、計6回を無失点。真中満監督も「走者を背負っても落ち着いている」と評価しており、開幕ローテ入りに一歩近づいた。
4日のオリックス戦に登板した巨人の桜井俊貴も、高い修正力を披露している。
2月23日の練習試合、韓国・KIA戦では持ち前の制球力が冴え渡ったが、この日は「緊張して力んだ」と初回から四球絡みで失点をしてしまう。
しかし、自らの好判断による併殺でピンチを切り抜けると、「下半身が使えていなかった」と修正点を意識し、2回、4回、5回はいずれも三者凡退。最終的には5回を4安打2失点でまとめ、“プロ初勝利”を挙げた。
昨季13勝を挙げたマイコラスが右肩の違和感で帰国したため、開幕ローテ入りは絶望的。桜井にかかる期待は大きくなる一方だ。
DeNAの今永は12回連続無失点!開幕ローテ入りへ突き進む
セのドラ1選手で唯一の高卒選手である中日・小笠原慎之介は、6日のヤクルト戦でオープン戦初登板。バレンティンに2ランを浴びるほろ苦いデビューとなったが、残るふたりの大卒投手は好調だ。
広島の岡田明丈は4日、中日とのオープン戦で実戦初先発し、3回1安打無失点と万全の投球。これで実戦は3試合、計7回を1失点。緒方孝市監督も「(先発ローテに)入れる形で投げさせている」と評価した。前田健太(現ドジャース)の抜けた穴を埋める一翼を担えるか。
DeNAの今永昇太も好調を維持。2日のヤクルトとのオープン戦に先発し、ドラフト4位の捕手・戸柱恭孝との“新人コンビ”で昨季のリーグ覇者を5回1安打無失点という完璧な内容でねじ伏せた。
9日にも鎌ヶ谷で行われた日本ハム戦に先発。雨のために試合途中で中止となったが、悪天候の中でも2回を無失点。中止で“参考記録”扱いとなってしまうこの試合を除いても、12イニング連続無失点を継続中と安定感が光り、開幕ローテ入りは当確か。
左腕も苦にしない安打製造機・高山俊
セのドラ1の中でただひとりの野手、阪神の高山俊もキャンプ中から高い能力を披露している。
故障によりキャンプは二軍スタートと出遅れたが、すぐに一軍昇格を果たすと安打製造機ぶりを発揮。これまでオープン戦4試合で15打数5安打の打率.333を記録している(※3月6日終了時点)。
左打者ながら、6日の巨人とのオープン戦では内海哲也、山口鉄也といったリーグを代表する両左腕から安打を放ち、半世紀ぶりに大学通算最多安打記録を更新したバットコントロールを見せつけた。
金本知憲監督の評価も高く、新人が開幕スタメン入りする“超変革”となるか。大きな注目を集めている。
もちろん、彼らが本当に通用するかは開幕してみなければ分からないが、ここまでのプレーを見る限り、期待は膨らむ一方だ。数年後に振り返ったとき、「まれに見るドラ1選手の当たり年」などと言われる可能性も大いにありそうだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)