2014年から一転、大不振に陥った昨季の糸井
昨季、大型補強を敢行し優勝候補にも挙げられていたオリックス。しかし、シーズン途中で森脇浩司監督が辞任するなど、優勝争いどころか、クライマックスシリーズ争いにも絡むことはなく5位に終わった。
低迷の要因はさまざまだが、ひとつには糸井嘉男の不振があるだろう。2014年シーズンは、打率.331で自身初の首位打者を獲得。出塁率も.424でパ・リーグ最高を記録した。しかし、昨季はケガの影響もあったが、打率.262、出塁率.366と大きく成績を落とした。09年から6年連続で記録していた打率3割もストップ。
セイバーメトリクスに、選手の活躍を得点に貢献した値、「得点貢献値」として評価する指標RC(Runs Created)というものがあるが、2014年はパ・リーグトップの113.65を記録した糸井のRCが、昨季は76.69まで下がった。これは、糸井ひとりで約40点減らした計算になる。カウント別打率を見ると、2014年は初球の打率が.353。ファースト・ストライクを打ったときの打率も.398と高かった。だが、昨季は初球を振った割合こそリーグの平均と大きく差がなかったものの、初球時の打率は規定打席に達したパ・リーグの選手のなかでワースト2位の.220。ファースト・ストライク時の打率は.339と比較的よかったが、初球時の打率がここまで落ちてしまうと、通算打率も急落して当然だろう。
古傷の左ひざも万全! 今季に復活を賭ける
昨季は、対左投手にも苦労した。対右投手の打率.284に対し、対左投手は.215。対左投手のOPS(出塁率+長打率)は2014年の.948から昨季は.780まで落ちた。近年、左投手を苦手にしていなかった糸井だが、古傷の左ひざの痛みもあったせいか、昨季は左投手に対し体が開く場面も多かった。
今季の復活を目指すため、糸井はその左ひざにPRP療法という治療を受けた。ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手が、右ひじ靭帯の部分断裂の治療で選択したものと同じものである。不安を取り除いた糸井は、オープン戦こそ33打数5安打、打率.152に終わったが、西武との開幕3連戦では3試合連続安打。ここまで打率.364を残している。まだ3試合が終わった段階とはいえ、左投手に対して7打数3安打。今のところ、昨季のように大きく崩される場面もない。
かつてはメジャーに最も近い選手とも言われた糸井。左ひざの不安も取り除いた今季、どこまで復活するか、大いに注目だ。
文=京都純典(みやこ・すみのり)