ヤンキースの右腕ではロジャー・クレメンス以来
MLBの開幕より1カ月近く前の現地時間3月6日、ニューヨーク・ヤンキースのジョー・ジラルディ監督は「今後の投球と体の状態を見る必要はある」と条件つきながら今季の開幕投手を「田中」と“公”にした。
MLBでは、開幕の1試合よりもシーズン通して先発ローテーションを守ることやイニング数が重要視される。そのため、開幕投手も日本ほど注目されることはなく、長いレギュラーシーズンのスタートという位置づけに過ぎないが、1カ月前に発表されるのはやはり異例だ。
ヤンキースの本拠地・ヤンキースタジアムは、本塁からの距離がレフトよりライトのほうが短い。左打者が有利とも言われるため、伝統的にヤンキースのエース級の投手は左腕が多かった。球団最多タイとなる7度の開幕投手を務めたホワイティ・フォードとロン・ギドリー、6度のレフティー・ゴーメッツも左腕だ。
近年で見てもアンディ・ペテイットやランディ・ジョンソン、一昨年まで6年連続で開幕投手を務めたCC・サバシアと、ローテの中心には左腕がいた。田中が予定通り開幕投手を務めれば、ヤンキースではロジャー・クレメンス(2001~03年)以来となる右投手の2年連続開幕投手となる。
開幕までに調子を取り戻せるか……
ただ、開幕が近づくにつれ田中の調子が落ちているのは気がかりだ。オープン戦初登板となった6日のフィラデルフィア・フィリーズ戦は、2回無失点。続く11日のボルティモア・オリオールズ戦は3回無失点と順調にきていた。
ところが、17日のピッツバーグ・パイレーツ戦ではコントロールに苦しみ、2回で50球を投げ2失点。23日のワシントン・ナショナルズ戦では1イニングで6点を奪われるなど4回を投げ7失点。田中が1試合で7失点を喫したのは、公式戦、オープン戦を通じて自己ワーストタイだ。日本の公式戦で5度、MLBでは14年9月27日のボストン・レッドソックス戦、15年6月21日のデトロイト・タイガース戦以来となる。
ちなみに、過去に日本人投手でMLBの開幕投手を務めたのは4人で、計6度ある。野茂英雄は、タイガース時代の00年とロサンゼルス・ドジャース時代の03、04年。そのうち03年は開幕戦で完封勝利を挙げた。ボストン・レッドソックスに所属していた松坂大輔は、東京ドームで行われた08年の開幕戦で先発した。5回2失点で松坂に勝敗はつかなかったが、チームを勝利に導いている。黒田博樹は、ドジャース時代の2009年に開幕投手を務め、6回途中1失点で勝利投手になった。
そして、昨季の田中はブルージェイズとの開幕戦で先発し4回5失点で負け投手になった。開幕戦で先発した日本人投手では初めての負け投手だった。昨季のリベンジとともに、ヤンキースの中心として投げてほしいが、開幕までに調子を取り戻すことはできるだろうか。
文=京都純典(みやこ・すみのり)