昨季、チームに大きく響いた岸の戦線離脱
昨季は、開幕5連勝スタートで波に乗り、前半戦は好調だった西武。しかし、7月15日の楽天戦からオールスターゲームを挟んで球団ワーストの13連敗。球団としては34年ぶりの2年連続Bクラスとなってしまった。
近年、毎シーズンのように西武の課題としてあがるのがリリーフ陣の問題だ。昨季もクローザーを高橋朋己から牧田和久に変えるなど、最後まで結局安定しなかった。ただ、昨季に関してはリリーフ以外の投手も力を発揮したとは言い難いものがある。先発陣で規定投球回に達したのは十亀剣だけ。牧田は途中でリリーフに回ったため仕方がないが、先発ローテーションを固定できなかったこともBクラスの要因だろう。
そのなかでもエース岸孝之が、ケガで離脱したことは大きな誤算だった。脇腹を痛め、シーズン初登板は6月4日の中日戦。打線の援護に恵まれなかった面もあるが、7月が終わるまでたった1勝しか挙げられなかった。クライマックスシリーズ進出争いが激しくなったシーズン終盤にも脇腹を痛め、戦線離脱。シーズン通算では16試合に登板し5勝6敗、防御率3.02。12年から続いていた二ケタ勝利は途絶え、4年ぶりに規定投球回に達しなかった。
プロ1年目からの10年連続完投勝利なるか
二ケタ勝利にも規定投球回にも達しなかった点はエースとして物足りないが、奪三振率は7.42、与四球率は2.04と投球内容は大きく崩れていたわけではない。1イニングあたりに許した走者の数を示すWHIPも0.91で、これは大谷翔平(日本ハム)と並ぶ数字だ。先発し5イニング未満で交代したこともなく、勝ち星には恵まれなかったがエースとして申し分ないピッチングをしたと言える。
今季初登板となった3月29日のソフトバンク戦では7回5安打無失点の投球を見せた。シーズン1勝目を挙げ、通算100勝まで残り5勝と迫った。また、通算1500投球回までは残り103回1/3。西武で通算1500投球回を達成した投手は過去に8人いるが、達成時の試合数は郭泰源の240試合が最少だ。岸の通算登板数はここまで208試合。リリーフに転向しない限り、最少登板数での通算1500投球回到達は濃厚だ。これはつまり、1試合での投球回が多いということだが、昨季、パ・リーグ最多の5完投を記録したように、岸は完投能力も高い。
プロ1年目から9年連続で完投勝利を記録していて、今季も完投勝利を記録すれば1987~1996年の西崎幸広(日本ハム)以来となるプロ入り10年連続完投勝利となる。
シーズンは開幕したばかりだが、西武の勝ちパターンの継投が確立されたとは言えない。したがって、今季もリリーフ陣で苦労することは十分考えられる。そんななか、完投能力のあるエース岸が、ケガなくローテーションを守ることができれば投手起用においても大きなプラスとなるだろう。かつての常勝軍団西武の3年連続Bクラス阻止のためにも、岸の快投に期待がかかる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)