館山のリハビリ生活を気にかけていた石川
ヤクルトスワローズの今季4試合目、本拠地開幕の先発ピッチャーは35歳になる館山昌平だった。チームは3連敗中でベテラン右腕にかかる期待は大きかったが、結果は5回5失点。「先発の仕事ができなかった……」と館山は肩を落とした。だが、神宮のマウンドで館山が投げていることが、ヤクルトには重要なのだ。昨年も、館山の奮闘する姿がチームにまとまりを生み、優勝への一助となっていたことは間違いない。
館山という投手が持つ“右腕”に、ケガはつきものだ。今までに3度のトミー・ジョン手術を受けただけでなく、血行障害もあった。体には151針の痕が残る。そんなボロボロの館山のリハビリを影で支えていたのはライバルであり、同僚の左腕・石川雅規の存在だ。2008年から2011年にかけ、ふたりはともに二ケタ勝利を挙げヤクルトの左右エースと呼ばれていた。石川は、館山のいない間もローテーションを守り続けた。それはまるで、館山の帰りを待っていたかのように。リハビリ中の館山のことも石川は気にかけ、休みの日にも関わらず、館山がリハビリを行っていた二軍施設のある戸田まで見舞ったこともあるという。
一方の館山も、石川に対する尊敬の念をプロ入り前から持ち続けている。大学時代、東都リーグで館山は日大、石川は青山学院大でしのぎを削っていた。ひとつ年下だった館山は、小さな体でタフな投球を見せる石川に憧れを持っていた。
リーグ連覇には館山の完全復活が欠かせない!
ヤクルト投手陣を見渡すと、今季は館山の“完全復活”が鍵になっていることが見えてくる。現状、チームの先発ローテーションは、小川泰弘、石川、原樹理、館山、成瀬善久、デイビーズの6人。エースは小川、左のエースは石川としても、ほかの先発が新人の原、新戦力のデイビーズ、昨季3勝の成瀬では、計算できず心もとない。リーグ連覇には館山の働きが欠かせないのだ。
さらに館山自身の復活に賭ける思いもある。館山は投手陣の大黒柱となった開幕投手・小川の実績をもちろん認めているが、本人のなかでは「左のエースが石川なら、右のエースは館山だ」という思いがあるに違いない。
かつて、5年連続二ケタ勝利の実績もある館山が、全盛期のような投球を取り戻し、石川と揃ってチームを引っ張りはじめたとき、ヤクルトのV2は現実味を帯びてくる。数年前のように、左右のベテランエースコンビが神宮を沸かせる姿をもう一度見たい。
文=松本祐貴(まつもと・ゆうき)