長打力はあるが出塁力に欠けたメジャー時代
中日の新外国人ダヤン・ビシエドが、開幕から圧巻の打撃を見せている。NPBの新外国人選手として史上初の開幕から3試合連続本塁打。3月31日までの6試合で打率.545、3本塁打、6打点と、昨季12球団最少の71本塁打だった中日打線を引っ張っている。
本塁打の内容は、開幕戦で鶴直人から打った1本目はストレート、26日の2本目は能見篤史のチェンジアップ、27日の3本目は藤川球児のカーブをすくい上げた。速球、変化球問わずスタンドまで運んでいる。
メジャー時代は、シカゴ・ホワイトソックスに在籍し、福留孝介と外野のポジション争いをしたこともある若手有望株だった。2012年に25本塁打、14年にも21本塁打を放ち、今年で27歳とまだ若いビシエドが、なぜメジャーに定着できず日本行きを選んだのか。それは、典型的な早打ちで確実性にも乏しかったからだ。
2012年は120三振、28四球。2014年は122三振、32四球。パワーヒッターだが、出塁能力は低かった。2014年は打率.231で出塁率は.281しかなかったのだ。たとえ長打力があっても、出塁力の低い打者はメジャーでレギュラーをつかむことは難しい。パワーヒッターはごろごろいるからだ。
ビシエドがメジャーで放った66本塁打のうち、初球を打ったのが9本。ファースト・ストライクを打ったのが14本。3球以内に打った本塁打が44本。本塁打も浅いカウントで打っているものがほとんどだ。
日本でも変わらない超積極的なスタイル
では、日本ではどうだろうか。3本塁打はいずれも初球を打ったものだ。開幕戦から3月31日の広島戦までビシエドに投じられた球数は全部で96球。その内訳は以下の通りである。
見逃しストライク 7球
ファウル 30球
見逃しボール 27球
空振り 5球
結果球 27球
結果球のうち四死球は5球。1打席で2球以上の見逃しストライクがあったのは27日の5打席目だけ。27打席中21打席は初球かファースト・ストライクを振っていて、残りの6打席中2打席は死球だ。つまり、ほとんどの打席で初球かファースト・ストライクを振っていることになる。
日本でもメジャー時代と同様にどんどん振っているとはいえ、27日の阪神戦で歳内宏明が7球連続でフォークを投げたが、食らいついていき結果的にはレフト前に運ぶなど、少々甘い変化球をとらえる力も備えている。
積極的に振ってくるビシエドに対し、今後相手バッテリーはまともなストライクを投げてこなくなることは間違いない。ストライクゾーンから少し外れた程度の球は捉えるが、明らかなボールが続いたときに我慢できるか。ビシエドが歩かされる場面も増えることが予想され、チームとしてはその後を打つ打者の調子もカギとなる。
開幕前の予想ではBクラスが多かった中日。4年連続Bクラスとなれば、球団史上最長と不名誉な記録になる。超積極的なスラッガー、ビシエドが中日の窮地を救うか。そのバットにすべてがかかっていると言っても過言ではないはずだ。
※数字は、2016年3月31日現在
文=京都純典(みやこ・すみのり)