チームの軸として期待される三拍子揃った逸材
オリックスが昨季同様に、どうも波に乗れない。開幕から13試合連続本塁打なしというプロ野球ワースト記録を作ってしまっただけでなく、4月26日終了時点でのチーム打率は.236とリーグワースト。金子千尋、西勇輝という先発の両輪も不調な投手陣も、チーム防御率5.04とこちらもリーグワーストだ。
4月12日からの対日本ハム3連戦、同15日からの対西武3連戦をともに2勝1敗で勝ち越して、ようやく“らしさ”が戻りつつあるが、本来持っているチーム力からしたら物足りないと言わざるを得ない。
昨季、そして今季ここまでの低迷は2014年のオフの総額30億円とも言われた大補強が尾をひいているのかもしれない。野手では、アメリカ帰りの中島宏之、FA宣言をした小谷野栄一(元日本ハム)、トニ・ブランコ(元DeNA)を入団させ、優勝に向け選手陣の一新をはかった。
だが、ブランコは今季開幕二軍でシーズンを迎え、難病の潰瘍性大腸炎で出遅れた安達了一の代わりにショートに入った中島はわずか16試合を終えたところで右ふくらはぎ痛により登録を抹消されてしまった。
かつて、打点王も獲得するなど勝負強さが売りだった小谷野も3本の本塁打こそ放っているものの、得点圏打率は.077とチャンスでまるで打てていない。
そんなチーム状況のなかで、打の中心となっているのは糸井嘉男だが、それに続く“軸”がいないのはやはり問題だ。日本を代表する打者に育っているはずだったT-岡田は不振で二軍落ち、守備の要である伊藤光もリード面の不備を理由に二軍に送られてしまった。そこで期待がかかるのが、チームの生え抜きであり三拍子揃った駿太である。
同世代の山田哲人、西川遥輝に追いつき、追い越せ!
駿太はプロ6年目の23歳。2014年には規定打席未到達ながら、127試合出場で打率.280本塁打5本の成績を残してブレイクを予感させるも、昨季は好調をキープすることはできずに打率.234、本塁打2本という成績に終わる。その悔しさから、駿太も開幕前から「プロ6年目ということで、やらなければいけない」と気合い十分で今季に挑んでいる。
同世代には山田哲人(ヤクルト)、西川遥輝(日ハム)というチームの中心選手となっているライバルたちがいる。球団史上初の高卒野手スタメンを飾るなどデビューこそ駿太のほうが早かったが、ふたりにはずいぶんと差を開けられてしまった。駿太自身も、山田や西川というライバルに対して、「追いついて、追い越せるように」と強く意識を持っている。
だが、目の前にあるのは山田や西川といった同世代のライバルではない。まずは、新加入の外国人・ボグセビックやドラフト1位・吉田正尚らとの外野レギュラー争いに勝ち、しっかりとレギュラーの座を射止めるのがなによりも先決だ。
福良淳一監督も駿太の潜在能力に大きな期待を持っている。キャンプ中から、「期待する選手は駿太。目の色を変えて頑張らないと」と奮起を促している。ただここまで、18試合に出場して打率.147では周囲を納得させることなど到底できない。4月22日のロッテ戦でも1番センターで出場し、5打数ノーヒットとまったく見せ場を作ることができなかった。ボグセビックや吉田がまだ低調なうちがチャンスを活かすときなのに、なんとも歯がゆい
駿太が持っている力を最大限に発揮したとき、オリックスというチームに新たな“軸”ができ、きっと強さも戻ってくる。年齢的にはまだ若いかもしれない。でも、期待度が高いからこそ裏切られ続けた印象だって強くなる。駿太にとって、期待が最も大きくなると同時に、勝負のシーズンになることは間違いないだろう。
文=松本祐貴(まつもと・ゆうき)