先発投手が早く崩れても勝率がリーグトップだった昨季
昨季、プロ野球史上に残る大混戦を制したヤクルトが、今季は開幕から波に乗れていない。5月2日現在、14勝15敗1分でセ・リーグ5位。チーム打率.280はリーグ2位と今季もよく打っているが、チーム防御率はリーグワーストの5.03と投手陣に誤算が多い。
トリプルスリーの山田哲人、首位打者の川端慎吾、打点王の畠山和洋を中心にリーグ最高打率.257、最多の574得点をあげた一方、投手陣はリーグ4位の防御率3.31と昨季も打撃陣が目立ったが、今季は投打の差が激しい。
先発投手が勝ち投手の権利を得るのは5イニングを投げ切った時点だ。逆に言えば、先発投手が5イニングを未満で降板するようだと苦しくなるが、昨季、セ・リーグ各球団の先発投手が5イニング未満で降板した試合の勝敗は以下の通りとなる。
ヤクルト
28試合 9勝19敗 勝率.321
巨人
22試合 7勝15敗 勝率.318
阪神
25試合 3勝21敗1分 勝率.125
広島
20試合 4勝16敗 勝率.200
中日
25試合 5勝19敗1分 勝率.208
DeNA
30試合 8勝22敗 勝率.267
ヤクルトは先発投手が5イニング未満で降板した試合がリーグで2番目に多かったが、勝利数、勝率はリーグトップだった。昨季のイニング別得点を見ると初回が最も多い84点。6回の72点、8回の70点と続く。打線が序盤から大量点をあげて逃げきった試合や、先発投手が早めに崩れても打線がカバーした試合が多かったと考えられる。
今季は、先発投手が5イニング未満で降板した試合がすでに8試合。このままいくとシーズンで38試合にもなる計算だ。8試合のうち勝ったのは1回だけと、昨季ほど打線でカバーできていない。
先発投手に勝ちがつきはじめ……“逆襲の5月”となるか?
先発投手が踏ん張り切れていないことや、投打がかみ合っていないことが苦戦している要因だが、4月28日の広島戦から今季初の4連勝。そのすべてで先発投手に勝ちがついた。序盤の失点を最小限にとどめられるようになりつつあり、5月1日の巨人戦では今季初の二ケタ得点と打線も活発になってきた。今季を迎えるにあたって課題だった1番打者にはオリックスから移籍してきた坂口智隆がはまり、クローザーのトニー・バーネットが抜けたことで不安視されていたリリーフ陣もジョシュ・ルーキ、秋吉亮、ローガン・オンドルセクの3人による形が見えてきた。
昨季はリーグ最少の71失策だったが、今季も最少の9失策と守備の破綻も見えない。畠山や上田剛史に加え、打撃が好調だった谷内亮太、投手陣ではカイル・デイビーズや館山昌平ら故障者が続出していることは気になるが、今季のヤクルトの“戦う形”が徐々に見えてきた感もある。投打がいまいちかみ合わなかったなかでも、首位広島にまだ3ゲーム差と十分挽回が可能な位置にいる。
先発投手がなるべく長いイニングを投げ、もし早めに降板しても打線がどうにか挽回できる範囲で失点を抑えることがこれからの戦いにおけるカギとなるだろう。セ・リーグ王者の逆襲はまだまだこれからだ。
文=京都純典(みやこ・すみのり)