ナ・リーグ西地区がアツい
ナショナルリーグ西地区が混迷を極めている。
現地時間5月12日時点で、首位のドジャースから最下位・パドレスまでの差は2.5ゲーム。この中に5チームがひしめき合う大混戦となっている。
開幕前の評価といえば、ドジャースをジャイアンツとダイヤモンドバックスが追い、ロッキーズとパドレスは再建モードというのが大方の見方だった。ところがフタを開けてみると、ドジャースとジャイアンツはここまで3連勝以上なし。強豪2チームが思うように白星を積み上げられていないのが、この混戦を演出している。
そんな中、奮闘を見せているのが2011年から5年連続負け越し中のロッキーズだ。
5日のジャイアンツ戦では、5回の1イニングだけで13点を挙げるなど、17-7で快勝。しかし、その後は5試合・49イニングにわたって合計13得点に留まるなど、極端な戦いを強いられていた。
ところが、11日の試合では久々に打線が爆発。8-7でダイヤモンドバックスを下し、首位・ドジャースから1.5ゲーム差と上位をうかがえる位置につけている。
ホーム/ロードの得意・不得意が逆転...
これまでのロッキーズといえば、ホームでの打撃成績は良いのにロードではからっきし打てない、というのが永遠の課題だった。
2013年から15年までの間、ホームでは126勝117敗(勝率.519)と勝ち越しているが、ロードでは82勝161敗(勝率.337)とその差は歴然。敵地での戦い方次第で上位進出も可能なように見えるが、そう簡単にはいかないのがここ数年のロッキーズなのだ。
しかし、今季はここまでホームで5勝10敗と苦しんでいるのに対し、ロードでは11勝8敗と逆転現象が起きている。
ホームで苦戦している大きな原因は投手陣にある。例年5点台を記録する本拠地での防御率が、今季は7.24といつも以上に悪い。一方で打線はさほど変化なく、1試合平均得点はホームで5.5点(昨季5.5点)となっていることから、得意のはずの本拠地で打ち負けてしまっていることが分かる。
ちなみに、ロードゲームでのチーム防御率は3.38と上々の数字。それでいて1試合平均得点は昨季よりも多い4.9点(昨季3.6点)を記録しているのだから、敵地で好成績を収めていることにも納得がいく。苦手だったロードでの成績が改善されつつある今こそ、これまで得意としてきたホームでの戦いぶりが重要になってくる。
初の地区優勝へ!台風の目となれるか…
ロッキーズというチームは、1993年に設立したばかり。長いメジャーの歴史で見ると、まだまだ“生まれたて”のようなものである。
これまでワールドシリーズには進出した経験があるものの、実は地区優勝を果たしたことがない。同じ年に創立されたマーリンズとともに、メジャーで地区優勝の経験がないのは全30チーム中この2チームのみなのだ。
打線は昨季二冠のアレナドに4月に9本塁打でナ・リーグ新人記録を更新したストーリー、さらには実績抜群のカルロス・ゴンザレスなど役者は揃う。加えて課題の投手陣もアウェーで4勝0敗、防御率0.33を誇るチャトウッドがエース級の働きを見せており、リリーフ陣も徐々に整備されつつある。
7年ぶりのプレーオフへ向けて解決すべき課題はまだまだ多いが、地区をかき回す存在になる可能性は十分ある。
上位進出に向けてカギを握るのが、この後から始まる強豪チームたちとの戦い。13日からメッツ、カージナルス、パイレーツ、レッドソックス、ジャイアンツという順番で、現在勝率5割超えを誇る各地の強豪5チームとの対戦が組まれている。
ロッキーズにとって、この15試合は今季前半戦の山場であり、今後のシーズンの命運を握る大きなカギとなるだろう。逆襲を期すロッキーズに注目だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)