メジャーデビューから4試合で計1失点の衝撃
ロサンゼルス・ドジャースの前田健太が、開幕から絶好調だ。
現地時間4月6日、パドレス戦でメジャーデビューを果たすと、6回を5安打、4奪三振で無失点の好投。打ってはデビュー戦で一発も放ち、初勝利を挙げる上々のメジャーデビューを飾る。
すると12日のダイヤモンドバックス戦でも6回まで5安打、4奪三振で無失点。3試合目のジャイアンツ戦では7回1失点で初失点を喫するも、23日のロッキーズ戦では7回途中を無失点。開幕4戦3勝と「ケンタ・マエダ」の名を鮮烈に印象付けた。
メジャーデビューから4試合に先発し、20投球回以上を記録した選手で失点が1以下だったのは、1リーグ時代の19世紀を含めてもメジャー史上初のこと。
また、メジャー初先発から4試合(25投球回以上)で計1失点というのは、マウンドからホームベースまでの距離が現行の18.44メートルになった1893年以降では1907年のマクイラン(フィリーズ)、1981年のバレンズエラ(ドジャース)に続く3人目。
ただしマクイランはデビュー戦がリリーフ登板であり、バレンズエラも前年にリリーフとして10試合に登板していたため、純粋なメジャーデビューからの4試合先発となれば、これも前田だけになる。
28日のマーリンズ戦では、初対戦となったイチローを3打数無安打に抑えた。イチローの今季初三振を奪うなど好投をしていたが、7回につかまり、後を受けた投手たちが走者を返して一気に4失点。メジャー初黒星を喫した。
カウント球でのカーブが今後のカギを握る
メジャー1年目の4月を好成績で終えた前田。そこで、田中将大(ヤンキース)やダルビッシュ有(レンジャーズ)といったメジャーの先輩たちの同時期と成績を比較してみよう。
・前田健太
[2016年・4月] 3勝1敗 投球回32 防御率1.41
・ダルビッシュ有
[2012年・4月] 4勝0敗 投球回33 防御率2.18
・田中将大
[2014年・4月] 3勝0敗 投球回35と2/3 防御率2.27
ご覧のように、勝利数こそダルビッシュには及ばなかったが、防御率では3人の中でもトップの成績だ。防御率1.41は、メジャーリーグ全体でも7位の数字(※現地5月4日現在)。順調な滑り出しを見せたと言えるだろう。
ここまで前田の投球を球種別で見ると、フォーシームが24.2%、ツーシームが17.3%、スライダーが33.3%、カーブが15.8%、チェンジアップが9.4%という配分になる。
ほかの日本人投手を見ると、田中や岩隈久志(マリナーズ)がスプリット、ダルビッシュはスライダー(カット系)を主な武器としているが、これまでのピッチングを見る限り、前田は“カーブ”を有効に使っていることが見えてくる。
決め球としてはスライダーを多く使っているが、カウント球としてのカーブの使い方が絶妙。特に左打者のアウトコースから入ってくるカーブで面白いようにストライクをとっているのだ。日本にいるときからそういったピッチングがうまかったが、メジャーでもその技術を十分に発揮している。
このまま好投を続けてほしいが、メジャー2度目となる中4日登板となった4月28日のマーリンズ戦では、スライダーが抜けたり、ストレートが逆球になったりする場面が目立った。中4日のマウンドが続くことは、これまで多くの日本人投手がぶつかってきたメジャーの壁でもある。
ただ、そのなかでもカーブの制球に狂いは見られなかった。今後は“カーブ”をどう生かしていくかが、より重要になるだろう。
文=京都純典(みやこ・すみのり)