コラム

【白球つれづれ】中日躍進の陰に「マルちゃん」あり?森ヘッドの“中南米ルート”開拓の裏に意外な人物

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中日大健闘の立役者・ビシエド。この人もまた森ヘッドの独自ルートから来日した (C)KYODO NEWS IMAGES

「白球つれづれ」~第8回・中日を支える助っ人外国人のヒミツ~


 つい1週間ほど前のことだ。とある報道関係の集まる会に、中日・西山和夫代表の姿があった。

 「いやあ、こんないい時に顔を出すなんて。もう二度とないだろうからね」周囲から冷やかしの声。この時点で中日が首位に立っていたのだ。

 自身も新聞記者出身の西山さんは、「何を言ってるの?これから貯金をもっと増やしていくんですよ」と反撃していたが、開幕前のペナント予想では大半の評論家が最下位に指名。16日現在も巨人に2ゲーム差こそつけられたものの、広島を1厘差で抑えての2位は大健闘と言えるだろう。


救世主となった“助っ人トリオ”


 開幕前のドラゴンズを見たとき、前年の5位から大躍進のにおいはしなかった。

 落合博満監督時代には5度のリーグ優勝を成し遂げ、2007年には日本ハムを撃破して日本一に輝く黄金期を謳歌。しかし、3年前に谷繁元信監督兼捕手にバトンタッチすると、連続Bクラスに低迷する。

 加えて昨年オフには山本昌、小笠原道大、和田一浩らの「名球会トリオ」が現役を引退。エースの吉見一起は復帰こそ果たして入るものの故障の不安を抱え、かつての守護神・岩瀬仁紀の衰えは隠しようがない。

 それを補うドラフト戦略も、1位に高校生の小笠原慎之介を指名するなど将来性を見据えたシフト。もちろん、長年守備の要だった捕手・谷繁元信の監督専任だって痛い。誰が見ても大幅な戦力ダウンに映ったはずだ。

 そんな中で、現在のところ「救世主」の働きを見せているのがダヤン・ビシエド、リカルド・ナニータ、アンダーソン・エルナンデスの中南米野手トリオだろう。

 特に新外国人のビシエドは打率.314(リーグ9位)、本塁打13(同1位)、打点33(同2位タイ)とその働きは文句のつけようがない。

 さらに、昨年加入のナニータも、ここまでリーグ4位の打率.341と首位打者さえうかがう勢い。また、現在は外国人枠の関係で一時降格中だが、エルナンデスが故障で離脱中の高橋周平の穴を埋めた。この助っ人トリオは他球団にとって脅威そのものだった。


「森マジック」のキッカケとなった意外な人物とは...


 キューバ出身のビシエドと、ドミニカ出身のナニータにエルナンデス。3選手の年俸は順番に1億7000万円、3000万円、4500万円とお買い得だ(※金額はすべて推定)。

 ちなみに、巨人の新外国人であるギャレットの推定年俸は3億500万円だと言われるから、この3人合わせてもまだお釣りがくる。

 近年、特に助っ人外国人の発掘には定評がある中日。少し前ならトニ・ブランコ(現オリックス)が猛打を誇り、昨年まではアベレージヒッターとして中軸を担ったエクトル・ルナ(現広島)がいた。この両選手もドミニカン。つまり、中南米に確固たるネットワークを作り上げているのだ。

 “黄金ルート”の仕掛け人は、森繁和ヘッドコーチ。球団内のもう一つの顔として、編成部国際渉外担当の肩書を持つ。

 落合監督時代に投手コーチとして迎えられて以来、シーズンオフには毎年ドミニカを中心としたウインターリーグを欠かさずに視察。その歴史は15年を数えるまでになった。

 「きっかけは、落合監督に外国人獲得のルートはないのかと言われてから。実は西武時代のチームメートだったマルチネスから一度、遊びに来ないか?と誘われていたんだ」

 マルチネスとは、西武や巨人で活躍したドミンゴ・マルチネスのこと。1997年に西武へやってくると、2年連続で30本塁打を記録。1999年からの3年間は巨人で過ごし、日本で計5年間プレー。“マルちゃん”の愛称で親しまれた。

 わずかな人脈を頼って海を渡ると、そこは人材の宝庫だった。ドミニカには現在、MLBが運営する「ベースボールアカデミー」だけで34校もあるという。

 「ダイヤの原石がゴロゴロいるよ。貧しいから、成り上がっていくには野球が近道。その分、生存競争も激しい」。

 オフには本物のメジャーリーガーも加わってウィンターリーグが開催される。特Aクラスでメジャー球団が獲得しても、まだまだ好素材が残る。こうした選手を獲得するには、長い期間かけて築いた代理人や関係者との“パイプの太さ”が決め手となるのだ。

 悲しいかな、外国人選手の働き次第でペナントの行方も大きく左右されるのが、我が球界の現状。“最下位候補”と言われた中日の逆襲の陰には、「森マジック」があった。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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