打てる二塁手が増加
肩の強い子が投手、体格のいい子は捕手、そして小柄で足の速い子は二塁手。
一昔前はそんな感じで大雑把にポジションを決める少年野球の監督も多かった。それが一人の選手の出現で完全に過去の常識になりつつある。ヤクルトの背番号1、山田哲人だ。昨季はトリプルスリーに加え、史上初の本塁打王と盗塁王の同時獲得と一気にスーパースターの階段を駆け上がり、今季もすでに15本塁打を放ちホームランキング争いのトップを快走中。「強打の二塁手」という新ジャンルを提示してみせた規格外の男だが、現在12球団の二塁手はどれだけ打っているのだろうか? 今回は球界の二塁手打撃成績を比較してみよう。
<セ・リーグ>
今季成績:46試合 打率.333 4本塁打 28打点 OPS.819
クルーズ(巨人)
今季成績:34試合 打率.271 5本塁打 18打点 OPS.720
荒木雅博(中日)
今季成績:36試合 打率.281 0本塁打 7打点 OPS.616
大和(阪神)
今季成績:41試合 打率282 1本塁打 9打点 OPS.719
石川雄洋(DeNA)
今季成績:34試合 打率.197 1本塁打 6打点 OPS.500
山田哲人(ヤクルト)
今季成績:48試合 打率.331 15本塁打 33打点 OPS.1.116
<パ・リーグ>
本多雄一(ソフトバンク)
今季成績:36試合 打率.240 0本塁打 11打点 OPS.633
ナバーロ(ロッテ)
今季成績:23試合 打率.203 1本塁打 12打点 OPS.668
田中賢介(日本ハム)
今季成績:45試合 打率.294 1本塁打 26打点 OPS.742
西野真弘(オリックス)
今季成績:42試合 打率.321 0本塁打 10打点 OPS.787
浅村栄斗(西武)
今季成績:45試合 打率.260 7本塁打 24打点 OPS.728
藤田一也(楽天)
今季成績:24試合 打率.233 0本塁打 10打点 OPS.531
やはり山田哲人(ヤクルト)の成績が図抜けているが、今シーズンは他の二塁手の打撃も好調だ。菊池涼介(広島)は12球団トップのチーム打率.275を誇るカープ打線の不動の2番打者として首位を走るチームを牽引。クルーズ(巨人)は、打撃不振のギャレットの代わりに4番を任され、荒木雅博(中日)や田中賢介(日本ハム)といった30代中盤から後半のベテラン勢もそれぞれ存在感を見せている。
2年目の西野真弘(オリックス)はルーキーイヤーの昨季、3割を越える活躍を見せながらも7月に右手首骨折で離脱。その雪辱に燃える今季は打撃好調でリーグ4位の打率.321をマーク。守備面も着実に向上している25歳は、今後パ・リーグを代表する二塁手として定着しそうだ。
果たして2016年の山田哲人はどこまで進化していくのか?
少年野球では、90年代中盤から00年代にかけて球界の二大スーパースターだったイチローと松井秀喜に憧れた「右投左打」の子どもが急増したという。もしかしたら、10数年後には山田哲人に憧れて野球を始めた野球少年たちが「強打の二塁手」としてプロ野球界を席巻するかもしれない。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)