女子野球で画期的な取り組み
6月11日、埼玉県・上尾市で行われた日本女子プロ野球リーグ・埼玉-京都の一戦。実はこの試合、野球界にとってある“革新的な試み”が実施された試合だった。
その名も「トライアルゲーム制度」――。
これは、女子野球普及のための“育成型チーム”として活動している「レイア」の選手たちが、トップチームの試合に出場できるという制度。レイアの所属選手により高いレベルの中での実戦経験を積ませ、選手個々のさらなるレベルアップを目的とするものだ。
レイアに所属する選手たちは、高卒1年目ないし2年目の選手が中心。主に育成を目的とした球団であり、正規リーグ戦のヴィクトリアシリーズには加わらずに活動を行っている。
男子に置き換えるとすると、各球団の二軍もしくは三軍で奮闘しているルーキークラスの選手たちが、“おためし”として一軍の試合に出場できる制度ということになる。
もしも男子プロ野球にこの制度があったなら...
もし仮にこの制度が男子プロ野球で導入されたら……一体どうなるのだろう。
出場選手枠という制度がある以上、各球団はルーキーを一軍に上げたくても、現実的には難しいという状況がある。
チームの勝利を考えた時、やはり即戦力のベテランをベンチに置く方が安心できるのは明らか。よってルーキーたちは、まず二軍で経験を積んでいくという流れになる。
しかし、この制度があれば、出場枠のことを考えることなく、育成選手やルーキーたちを試合に出場させることができるのだ。ロッテの平沢大河や楽天・オコエ瑠偉といった選手たちも、気兼ねなく一軍に帯同させておくことができる。
ファンは話題の大型ルーキーを目にするチャンスが増え、選手たちにとっても一軍のプレーをより身近に感じることができる。まさに一石二鳥な取り組みといえるだろう。
野球界の未来を変える取り組みとなるか
今回の試合では、6人の選手が一軍の試合に登録された。そして、埼玉アストライアを率いる河本監督はこの制度をさっそく実施する。
先発を将来の女子プロ野球界のエース候補として名高いレイアの古谷恵菜に託し、その女房役には同じくレイアの泉由希菜を抜擢。なんと育成選手にトップチームの先発バッテリーを任せたのだ。
さすがに緊張気味の立ち上がりとなった古谷だが、トップチームを相手に堂々のピッチングを披露。泉の大胆なリードも光り、4回を投げて1安打無失点。トップチームを完封してみせた。
「うしろで守ってくれているのが大先輩たちなので、安心して投げられました。楽しかったです」と古谷。泉も「学ぶことが多かったです。本当に楽しかった」と笑顔で振り返っている。
一方、対戦相手の京都では、「美人すぎる」として人気沸騰中の2年目・みなみ(高塚みなみ)が先発出場。安打こそ打てなかったが、関東初上陸となった話題の選手の出場にファンは大いに沸いた。
みなみは「緊張しましたけど、いい経験になりました。このトップチームに上がりたいという気持ちでやってますし、このようなチャンスをいただけて、さらに気持ちが強まりました」とコメント。
「美人すぎる…」として注目を集め、この日も喝采を浴びたことについては「あまりハードルを上げられると…。でも、注目されるのはいい事だと思いますし、名前も憶えてくれると思うので、頑張ります」と、照れ笑いだった。
週6日、仙台で朝8時から猛練習を積むレイアの育成選手たち。男子プロ野球にはないこの「トライアル制度」で、すぐに高いレベルの野球にも慣れていくことだろう。
このような革新的な制度が、野球界の未来を変えていくことにつながるのかもしれない。