好調支える“優良助っ人”
日本ハムの勢いが止まらない。
連勝を9年ぶりとなる11まで伸ばし、首位・ソフトバンクとは6ゲーム差。勝てども勝てども縮まらなかった差が、徐々にではあるが詰まってきた。
ここ最近はなんと言っても二刀流・大谷翔平の投打にわたる活躍ぶりが連日メディアを賑わせるが、来日1年目ながらクローザーに定着しつつある203センチの長身右腕・マーティンの活躍も見逃せない。
“不良助っ人”と思いきや…?
昨年の2位から、今年こそ「打倒・ソフトバンク」に闘志を燃やしていた日本ハム。しかし、出だしで躓いた。
大きな要因となったのが、昨季まで絶対的守護神として君臨していた増井浩俊の不振。今季は開幕から不調に苦しみ、5月上旬には二軍落ち。いきなりストッパー不在の苦境に立たされた中、栗山監督は中継ぎとして安定した投球を続けていたマーティンに白羽の矢を立てた。
ところが、増井が離脱した直後のソフトバンク戦。1点リードの9回にマウンドに登ると、2球連続でボークを取られるなど乱調。これにマーティンは激高し、審判に暴言を吐くなど大暴れ。退場処分にはならなかったが、球場内は騒然となった。
結局リードを守れず、またそういった行動から“不良助っ人”というレッテルを貼られてもおかしくない状況に陥った。
それでも、マーティンはそこから改心したのか、再び中継ぎに戻った5月はその試合で許した1失点のみ(自責点は0)と好投。そして6月中旬に増井が再び二軍落ちとなると、マーティンが抑えに定着。その時期がチームの連勝街道スタートと合致しているのだ。
ここまでの成績は33試合で1勝0敗8セーブ。15ホールドで防御率は1.72と申し分ない。さらに日本に慣れ始めた5月以降だけを見ると、防御率は0.92とその安定ぶりがよくわかる。
ソフトバンク追撃のキーマン
実はこのマーティン、もともとクローザーとしての資質を持った投手であった。
来日する前、アメリカでの成績を見てみると、「被本塁打が非常に少ない」というクローザーにはうってつけの特長を持っていたことがわかる。
メジャーとマイナーの成績を合算すると、通算313回と2/3を投げて許した本塁打は僅かに17本。9イニングあたりに換算すると0.49。18イニングに1本以下という少なさだ。来日後も、4月に2本打たれて以降は2か月以上一発を許していない。
また、クローザーの絶対条件である「三振を奪う能力」も優れている。今季ここまでの奪三振率は10.63で、これは松井裕樹(楽天/11.07)やサファテ(ソフトバンク/10.85)と比べても遜色ない。
制球力も抜群で、9イニングあたりの四球数1.15は、今季30イニング以上を投げているパ・リーグの全54投手の中で堂々の1位。来日1年目の早い時期からこれだけの適応力を見せる助っ人投手はそれほど多くないのではないだろうか。
絶対的戦力を誇るソフトバンクを追撃するためには、安定した救援陣の構築が絶対条件。今なお増井の二軍調整が続いている中、頭角を現したマーティンの活躍は、日本ハムにとって心強い事この上ない。
後半戦の大逆襲へ……。“優良助っ人”がチームを高みへと導く。
文=八木遊(やぎ・ゆう)