“トリプル15”は生まれるか...
一時は6月中にもマジックが点灯しそうな勢いだったソフトバンク。
しかし、日本ハムが6月19日以降で19勝1敗という驚異の追い上げを見せ、両チームの差は一気に縮まった。それでも、日本ハムがこれだけのペースで勝ち続けても、その差は4.5ゲームある。それだけ序盤戦のソフトバンクが安定した戦いを見せていたということだろう。
では、そのソフトバンクの強さの要因は何か……。
昨季トリプルスリーの柳田悠岐や、不動の4番内川聖一を中心とした抜け目のない打線の活躍も目立つが、原動力となっているのは安定した投手力ではないだろうか。
特に先発陣は、5年ぶりに日本に戻った和田毅、ともに23歳右腕の武田翔太、千賀滉大の活躍が大きい。和田はリーグトップ10勝をマークし、武田もすでに9勝。そこに千賀が8勝で続く。
このまま好調を維持できれば、「3人そろっての15勝到達」も夢ではない。もし実現すれば、1982年に巨人の江川卓、西本聖、定岡正二がそれぞれ19勝、15勝、15勝を挙げて以来、34年ぶりの快挙となる。
3人がこのままローテーションを守り続けると、それぞれあと9~10試合に先発する機会があり、決して不可能な数字ではない。
34年ぶり快挙なるか!?
一言で34年ぶりといっても、当時の先発投手は年間30試合以上に登板し、完投が当たり前という時代だった。それだけ白星(黒星)も付きやすく、最多勝争いの目安も「20勝前後」であった。
その後、投手の分業制が確立され、最近の先発投手は年間登板試合数が27試合前後。ここ数年の最多勝争いも「15勝」というのがひとつの目安となっている。
そんな現代野球において、3人がそろって“最多勝レベル”の15勝をクリアするとなれば、近年まれに見る偉業といえるだろう。
江川、西本、定岡の“15勝×3(トリプル15)”以降でいうと、1984年・阪急の今井雄太郎(19勝)、佐藤義則(17勝)、山田久志(14勝)や、同年ロッテの深沢恵雄(15勝)、石川賢(15勝)、仁科時成(13勝)がトリプル15にあと一歩まで迫りながら届かず。
1990年代以降になると、トリプル15に近づくことすら容易ではなくなる。巨人の斎藤雅樹、桑田真澄、槙原寛己や、2000年代ソフトバンクの斉藤和巳、和田毅、新垣渚といったエース級の“3本柱”ですら、同一シーズンに15勝以上をマークすることはできなかった。
果たして和田、武田、千賀の3本柱は、34年ぶりの快挙を達成できるのか。ペナント争いとともに3人のさらなる活躍にも注目だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)