試合の流れをひっくり返した一気の代打攻勢
7月23日、DeNA・ラミレス監督の積極采配が完璧にハマった。巨人に3点を勝ち越された直後の6回裏、一死一、二塁のチャンスを作ると、怒涛の代打攻勢。
まずは、宮崎敏郎が右前打で満塁にチャンスを拡大すると、続く下園辰哉が右前適時打を放ち2点差に迫る。さらに、白崎浩之の左翼線2点適時二塁打で同点。この回、代打陣の3連打などで一挙5点を奪い6-4で逆転勝利を収めた。
この試合、勝負の流れは完全に巨人が握っていた。先制したのも巨人ならば、中盤に疲れが見えはじめたDeNAの先発・井納翔一を攻略し、先に追加点を奪ったのも巨人。ところが、DeNAは一気呵成の攻めでゲームの流れをひっくり返してしまった。
今季開幕前、本格的な監督・コーチ経験がないということで、ラミレス監督を不安視する声も少なくなかった。だが、長年、日本のプロ野球界で培われた勝負勘は確かなものだったようだ。そしてなにより、その采配に応える代打陣が素晴らしい。
代打打率ランキング上位をDeNAが独占
DeNA代打陣の好調ぶりは数字を見れば明らかだ。20打席以上、代打で出場した選手の打率ベスト10は以下となる。
セ・リーグ代打打率ベスト10
1 .450 山下幸輝(DeNA)2 .357 今浪隆博(ヤクルト)
3 .355 下園辰哉(DeNA)
4 .345 乙坂智(DeNA)
5 .308 松山竜平(広島)
6 .296 藤井淳志(中日)
7 .276 飯原誉士(ヤクルト)
8 .241 狩野恵輔(阪神)
9 .227 田中浩康(ヤクルト)
10 .211 相川亮二(巨人)
※20打席以上の代打出場者
DeNAからは実に3人が上位4人にランクイン。打数が足りずランキングからは漏れているものの、白崎は14打数5安打、打率.357、桑原将志が10打数4安打で打率.400を記録しており、とにかくDeNAには代打成績が優秀な選手が多い。
なんと、ここまでのチーム代打打率は3割に迫る.292。これは2位・ヤクルトの.237を大きく引き離し、ぶっちぎりでリーグトップの数字だ。しかも、代打打数185も阪神の172を抑えリーグトップ。つまり、積極的に代打を送り、かつ結果を残しているということだ。
一方、対照的なのが、この日対戦した巨人である。代打打数124、代打打率.145はともに断トツのリーグワースト。この日も、代打に送られた相川亮二と大田泰示がともに三振に終わっている。この低打率では、代打を送るのもためらわれるというものである。
勝負どころで積極的に仕掛けられるDeNAと、そうではない巨人。初のCS進出を狙い、チームのモチベーションも上がる一方のDeNAは、2位・巨人に1.5ゲーム差にまで迫っている。それこそ、これからは勝負どころの連続だろう。
昨季、代打で38打数15安打、打率.395を残した高橋由伸は、今季から監督となった。長年、勝負強い切り札として他球団から恐れられた矢野謙次も昨季途中に日本ハムへトレードに出された。この“切り札不在”が、巨人とDeNAの明暗を分けることになるかもしれない。シーズン順位でDeNAが巨人を上回ったのは2005年が最後。その年はAクラス入りしたシーズンでもある。11年ぶりのAクラス入り、そして11年ぶりの打倒巨人を、好調代打陣が強力にフォローする。
※数字は2016年7月24日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)