トレードでチームを“壊した”ヤンキース
メジャーリーグは8月1日のトレード期限を終え、ポストシーズンへ向けた各チームのスタンスがはっきりとしてきた。
田中将大が所属するヤンキースは、セットアッパーのタイラー・クリッパードをダイヤモンドバックスから獲得した一方で、アロルディス・チャプマンやアンドルー・ミラー、カルロス・ベルトランといった主力級を一気に放出。代わりに複数の将来有望な若手選手(プロスペクト)を獲得するに至った。
MLB公式サイト『MLB.com』のジム・キャリス記者は、トレード期限を迎えたのを機に現時点の30チームのファームシステム(がいかに充実しているか)をランキング化。シーズン前と現時点のトップ10を発表した。
記事では、現在ナ・リーグ中地区4位に沈むブルワーズのファームシステムが全体の1位となり、ヤンキースはそれに続く2位。そしてアストロズが3位というランク付けになっている。
シーズン前はブルワーズが9位、アストロズが10位で、ヤンキースに至っては圏外(11位以下)というくらいの評価だった。しかし、ここ数日のトレードを経て、ヤンキースへの見方は大きく変わった。
黄金期の再来をめざして
守護神・チャプマンとの交換で獲得した4人のうちの1人、グレイバー・トーレスは19歳ながら走攻守そろった遊撃手として注目を集めている超有望株。
さらにミラーとのトレードで移籍してきた21歳のクリント・フレイジャーも三拍子そろった外野手で、すでに3Aでもプレーしている選手。他にもベルトランの見返りとして得たディロン・テイトは、昨年のドラフトでは全体の4位で指名されたという逸材右腕である。
すでに所属していた選手も含めると、メジャー全体のプロスペクトランキング100位以内のうち、実に8人がヤンキースに所属していることになる。まさに若手の宝庫なのだ。
今季のヤンキースはベテラン中心のロースターでなかなか勝率5割に届かず、将来のビジョンも見えずにいたが、多くのプロスペクトがそろい、2~3年先のチーム作りへと舵を切ったと見ていいだろう。
1990年代後半に訪れた黄金期のことを思い返して見ると、デレク・ジーターやホルヘ・ポサダ、アンディ・ペティット、マリアノ・リベラらが同時期にメジャーに定着。1998年から2000年にかけてワールドシリーズ3連覇を達成するなど、一時代を築いたチームの中心にいたのは叩き上げの選手たちであった。
現地ではアレックス・ロドリゲスに解雇報道が出るなど、チームは大きな転換期に来ている。ここ数日で一気にプロスペクトの宝庫となったヤンキースに再び黄金期はやってくるのか……。その答えが判明するにはまだ数年かかりそうだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)