高校時代はU-18ワールドカップにも出場
43勝61敗でリーグ5位のオリックス。クライマックスシリーズ進出圏内の3位まで15.5ゲーム差と厳しい戦いが続いているが、そのなかでひとりの若手捕手が頭角を現しつつある。高卒3年目の若月健矢だ。
花咲徳栄高の1年時からレギュラーとなり、3年春には4番・捕手としてセンバツに出場。夏の甲子園出場はならなかったが、高校日本代表に選出されU-18ワールドカップに松井裕樹、安楽智大(楽天)、森友哉(西武)、上林誠知(ソフトバンク)らとともに出場した。その年のドラフト3位でオリックスに入団し、プロ2年目の昨季、一軍でも5試合に出場している。
近年、オリックスの捕手陣は、伊藤光とベテラン・山崎勝己の併用が続いていた。今季も伊藤・山崎体制で戦っていたが、山崎は“守備専門”と言えるほど打力に乏しく、伊藤はリード面で不安をのぞかせることが多い。そこで6月上旬、交流戦中盤から若月がスタメンマスクを被ることが多くなった。
7月19日のソフトバンク戦では西勇輝を巧みにリードし、今季初完封に導いている。西とのコンビではここまで防御率2.07と相性の良さを誇る。
エース金子千尋と組むときはいつ?
今季、二軍では85打数19安打、打率.224だった打撃も一軍では131打数33安打、打率.252とまずまずの結果を残している。左投手に対し、打率.345とキラーぶりを発揮しているのも首脳陣にとっては嬉しい誤算ではないだろうか。
若月がこのまま正捕手を獲得するのかに注目が集まるが、当然ながら課題もある。パスボールこそ記録していないが、キャッチング技術がまだ追いつかず、50試合の出場で失策も3と守備に不安を抱えている。
また、西以外にディクソン、東明大貴、松葉貴大、山田修義、山崎福也とはバッテリーを組んでいるが、エース金子千尋が先発のときは一度もスタメンマスクを被っていない。金子と伊藤の相性もあるだろうが、首脳陣としては伊藤の復調を金子に託しつつ、若月に対する「正捕手の座はそう簡単に手に入れられるわけではない」というメッセージもあるのかもしれない。
ただ、裏を返せば、金子と組んだときに結果をしっかり残せれば、正捕手の座がグッと近づくとも言える。「優勝するチームに名捕手あり」とは、野村克也氏の名言だが、今年の10月で21歳の若月が正捕手となれば、チームの再建にも希望が見えてくる。チームとしては目標を定めづらいペナントレースとなっているが、若月にとっては正捕手の座をかけた戦いがこれからも続いていく。
文=京都純典(みやこ・すみのり)