自力CSも消滅…状況は日に日に悪化
7月26日、西武の自力CS進出が消滅した。日を追うごとに状況は悪くなるばかり……。田辺徳雄監督も「重く受け止めている」と苦悶に満ちた表情で口を開いた。
このままいけば、3年連続のBクラス。それどころか「西武ライオンズ」が誕生した1979年以来、実に37年ぶりの最下位に終わることも頭をよぎる。
だからと言って、下を向いている暇はない。「前を向いてやっていくしかない」。指揮官がそう語った2日後の28日、不調の影響などもあり、栗山巧はベンチスタート。中村剛也を4番から外すなど試行錯誤し、チームに変化を与えた。
その結果、初回から打線がつながり勝利を収めたが、長い目で見た時に今後につながる結果だったかと問われると疑問符がつく。
そんな中、チームに新たな風を吹き込む存在として期待されているのが、この日も4打数2安打と活躍したプロ3年目20歳の森友哉だ。ただし、それは「右翼・森」でも「DH・森」でもなく「捕手・森」。もちろんリスクは承知の上だ。
できる力を持っている、足りないのは“経験”だけ
大阪桐蔭高時代は強肩強打の捕手として甲子園を沸かせた森。2013年、ドラフト1位捕手として大きな期待を受けてプロの世界へと飛び込んできた。
ルーキーイヤーからいきなり一軍で6本塁打を放つなど、すぐにその“大物”ぶりを発揮。2年目の昨季は指名打者としてレギュラーに定着。138試合に出場し、打率.287、17本塁打、68打点と活躍を見せた。
そんな森は、29日のオリックス戦で2年ぶりに捕手として先発出場する見込みとなっている。
「チームもこんな状況だから、若い選手にチャンスを」。そう話すのは田口昌徳バッテリーコーチ。森には「準備しとけよ」と伝えたと言う。
「捕手として取ったからには、やらせてあげたい」。これが田口コーチの親心だ。
捕手としての経験は圧倒的に乏しい。ちなみに、昨季は「0」。今季は春季キャンプで本格的に捕手の練習に取り組んだものの、オープン戦の途中からは打撃に専念させるため、再び捕手を「封印」した。
というのも、一軍には侍ジャパンの常連の正捕手・炭谷銀仁朗という大きな存在がおり、加えて森と同期で大阪桐蔭の先輩でもある岡田雅利に、ベテランの上本達之らがおり、開幕してからも森がマスクをかぶることはほとんどなかった。
ここに来て試合終盤からマスクをかぶるというシーンが見られるようになったが、それもわずか2試合のみだ。
苦しむ西武に新風を
しかし、田口コーチは森に大きな期待を寄せている。
最近では1学年上の田村龍弘(ロッテ)や、同学年の若月健矢(オリックス)など、各球団で若手捕手が頭角を現してきている。
「今は田村や若月に遅れをとってしまっているが、森は力もあるし、できないとは思わない。打撃は抜群に良い。後は守備だけだが、これは経験を積むしかない」。
そう、森に足りないのは“経験”なのだ。
29日のゲームでコンビを組むのは、プロ2年目・19歳の高橋光成。森と高橋光は2013年に行われた第26回AAA世界野球選手権でバッテリーを組み、日本の準優勝に貢献。今年のオープン戦でも、2人はコンビを組んでいる。
「最初から全部上手くいくことはない。若い2人にはフレッシュな思い切ったプレーをしてほしい」。
失敗を恐れず、どんどん行け。そして一回りも二回りも大きく成長してほしい…。それが田口コーチの、そしてファンの偽らざる思いだろう。
冬来たりなば春遠からじ――。
西武は今、季節外れの冬を迎えている。そんな苦しむレオ軍団に、フレッシュな20歳が春風のような新風を吹き込もうとしている。