懲罰続投後の成績は?
1か月半前のあの采配を覚えているだろうか。7月8日の阪神と広島の一戦で阪神の金本監督が先発した藤浪晋太郎に161球を投じさせた、あの一件だ。物議を醸したいわゆる懲罰続投。あの采配は藤浪にとってカンフル剤となったのだろうか。
その後、虎の右腕エースはオールスター休みを挟んで、5試合に先発。さすがに投球数は、多い試合で126球と平均的な数字に落ち着いた。その5試合で藤浪は1勝4敗と負け越しているものの、すべての試合でクオリティースタートを記録(6イニング以上投げ、自責点3以内)。防御率は2.73と、それ以前の3.46から大幅に良化している。
しかし立ち上がりの不安定さは相変わらずで、5試合中4試合で序盤3回までに失点、3試合で先制点を献上している。さらにその間、首位を走る広島相手に0勝3敗とカープ独走の一因を作るなど、エースとしての意地を見せられずにいる。しかし、あの登板後、特に球威が衰えた様子もなく、肩、肘に影響はなさそうだ。
あの“懲罰続投”を短期的な視点で見ると、いい影響も悪い影響も出ていないといっていいだろう。ただし、161球を投じさせた事実は変わらず、今後藤浪の肩や肘に少しでも不安をのぞかせるようなことがあれば、あの采配が思い出されることになる。それほど現在のプロ野球では、投手を大事にすることが重要視されている。逆に言うと、過保護だという意見もあるだろう。あの采配が正しかったのか、間違っていたのか、それを証明できるのは今後の藤浪自身ということになる。
現在僅か5勝の藤浪が、今季残り1か月半の間に上昇カーブは描けるのだろうか。地元の虎ファンは大きな期待を抱いているに違いない。しかし藤浪は今季甲子園球場では散々たる数字が残っている。7試合に登板し、1勝3敗、防御率4.57……。地元ファンの前で期待に応えられないエースの姿に視線が厳しくなるのは当然だ。昨季まで甲子園では通算19勝4敗と圧倒的なパフォーマンスを見せていた。そのコントラストもより見栄えを悪くしているのだろう。
現状のローテーション通りなら9月以降は甲子園での登板が多くなりそうだ。その数試合で虎のエース、いや球界のエース候補として藤浪は再び輝きを取り戻せるのだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)