昨季までは一軍通算1打数0安打
金本・阪神の「超変革」が本格的に動き始めた。開幕から積極的に若手を起用してきた金本監督だが、チームの精神的支柱でもある鳥谷敬の先発起用には頑なにこだわりを見せていた。しかし先月、5年ぶりに鳥谷をスタメンから外すと、その後は代打での起用がメーンとなった。
代わりに遊撃手として抜てきされたのが4年目北條史也である。2012年のドラフト2位という高評価で阪神入りした北條は、関西出身で、光星学院高校(現八戸学院光星)卒という経歴もあり、プロ入り前から巨人の坂本勇人になぞらえ「坂本2世」と呼ばれてきた。
6学年先輩の坂本は、巨人で2年目の開幕からレギュラーに定着すると、その年に早くも年間フル出場を果たす。さらに3年目に打率3割超え、4年目には31本塁打を放つなど、いまや侍ジャパンに欠かせない存在にまで成長した。一方、北條は昨季までの3年間は一軍で通算1打数ノーヒット。二軍では一定の活躍はしていただけに、なかなかチャンスが与えられなかったという印象を持つファンも多いだろう。
成長を遂げた4年目
そして金本監督が就任した今季は、開幕から積極的に起用されてきた。4月こそ、打率.185と結果を残せなかったが、一軍にとどまり金本監督の我慢強い起用が功を奏す。5月に打率.304をマークすると、徐々に出場機会は増え、8月に入るとついにその天性の打撃が覚醒する。
7月までは245打席で長打の数は10本(二塁打9本、本塁打1本)だったのが、8月は72打席のみで11本(二塁打9本、三塁打1本、本塁打1本)を記録。出塁率も高く、8月の月間OPSは.945と非常に高い数字を残している。19日からの巨人3連戦でも先輩・坂本の前で4安打(うち二塁打3本)、21日の試合では決勝タイムリーも放った。
坂本に比べると“遅咲き”ながら、このまま打てる遊撃手としてレギュラーに定着できるのか。しかし10年以上にわたって阪神の主軸を担ってきた鳥谷も、このまま黙っているわけにはいかない。今季は開幕から不調が続くもまだ35歳。当然遊撃手としてレギュラー奪還を狙っているはず。
ここ数年、阪神であまりは見られなかったベテランと若手の激しいレギュラー争奪戦。ようやく鳥谷を超え得る遊撃手が出てきたことは阪神ファンには喜ばしいこと。今季残り、そして来季開幕以降、金本監督はどういうビジョンを描いているのだろうか。「超変革」が成功するかどうかのカギは北條が握っているのかもしれない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)