来季からは二塁上でのプレーにも新ルールを導入?
今季からNPBに導入されたコリジョンルール。明らかにアウトだったプレーが同ルールの適用でセーフになるなど適用に関する混乱が続いたため、7月のオールスターゲームを境に新しい運用基準を適用することになった。
二塁ベース付近で走者が併殺を防ぐために行う走塁、いわゆる“併殺崩し”に関して、MLB同様の新ルールを導入するというものだ。MLBでは併殺崩しと呼ばれるスライディングについて、以下のような新ルールを導入した。
・走者は野手と接触する目的で走路を変えることを禁止する
・スライディング後、二塁ベースに手か足がついているようにする
野手が二塁に触塁したあと、走者のスライディングをかわすために横に避けるが、そのかわした野手に向かってスライディングする走者がいる。二塁から大きく離れ、野手めがけてスライディングすることもあり、それがきっかけで大ケガをすることもある。そういったプレーを禁止するのが新ルールだ。
肉眼ではわからないプレーにもチャレンジを要求
コリンジョンルールに二塁上でのルールと、MLBより少し遅れて新ルールを導入しようとしているNPBだが、このままいけば「チャレンジ制度」を導入しようという声もあがってくるかもしれない。
先ごろ行われたオリンピックでも様々な競技でチャレンジ制度が導入されていたが、MLBでは2014年から現在のようなチャレンジ制度が行われるようになった。リプレー検証用のスタジオをニューヨークに建設し、全30球場それぞれに設置された10数台のカメラの映像を一括管理。分析担当の審判員が各球場の審判員と連絡を取り合うのがMLBのチャレンジ制度の仕組みだ。
かなりの費用がかかるため、NPBでもMLBのようなシステムでチャレンジ制度を行うのは難しいかもしれないが、それ以外の点でMLBのチャレンジ制度には首を傾げる部分がある。
最近のMLBを見ていると、判定が微妙なプレーが起こったとき、監督やコーチがブルペンなどと連絡するための電話を手に取り、球場内のスタッフと連絡を取っていることがある。そのスタッフがリプレーを見た結果を受け、チャレンジが成功しそうなときに監督がチャレンジ権を行使するのだ。これではチャレンジ制度の意味があまりないような気がする。
また、スライディングしてきた走者に対し、野手がぴったりとボールの入ったグラブをつける場面も増えている。スライディングの流れで、走者が一瞬宙に浮いてベースから離れることがあるが、そのときにグラブを走者にぴったりとつけていればルール上はアウトになる。肉眼ではわからないが、リプレーで見れば走者の体とベースが一瞬離れていることがある。そういったプレーをリプレーで確認し、チャレンジを要求する場面を目にする。
審判は肉眼で判断し、判定を下す。それをリプレーでしかわからないようなプレーに対してもチャレンジを要求しては、どこか味気なく感じてしまう。テクノロジーの発達は歓迎すべきことかもしれないが、使う側の“倫理”も求められているのではないだろか。そういった点でも、NPBはチャレンジ制度導入に関して慎重に検討してもらいたいと思うのだ。
文=京都純典(みやこ・すみのり)